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草食系おじさんが、ギャルに捕食されようと相席居酒屋に行った結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第61話>

相席居酒屋に乗り込んだエクセルとゼブラ

 甲斐さんと松田さんは、もう数年前の話になるが、僕がたまに行っていた立ち飲み屋の常連客だった。話したことはなかったが、いつ行っても二人でくだを巻いていたので、まあ、毎日来ていたのだろう。  「いつまでもこんなチンケな店で飲んでいるわけにはいかねえ!」  甲斐さんがそう声を上げた。  「んだんだ」  松田さんがそれに呼応する。  その言葉に苛立ったのかカウンターの奥にいた不愛想な店主がさらに表情を固めて二人を睨みつけていた。  「なんでも若いギャルと相席になる居酒屋があるんだって」  「ほら北口のとこの」  「今度行ってみるしかないな」  二人はそんな会話で盛り上がっていた。あの相席居酒屋に行くらしい。  「おしゃれしていくしかないだろ」  「ギャルに負けないようにな」  ギャルに負けないレベルのおしゃれってのがいまいちよく分からないが、なんだか羨ましかった。僕も二人にお供して相席居酒屋デビューを飾りたかったからだ。絶対にギャルと打ち解けて仲良くなれるやん。そういう居酒屋だもん。そう信じて疑わなかったからだ。  けれども、二人とは特に仲良くなく、こうして話を盗み聞きする程度の間柄なので、とてもじゃないが「連れて行ってくれ」とは言えなかった。  数日して、件の立ち飲み屋に行くと、甲斐さんと松田さんが、なかばうなだれそうになりながら、いつも以上にくだをくだくだと巻いていた。どうやら、相席居酒屋で酷い目にあったらしい。  俄然興味が湧いてきた僕は、不愛想な店主に事情を説明する二人の話に耳を傾けた。  相席居酒屋に行く日、甲斐さんはおしゃれしてきたらしい。  「一番高い、長方形がたくさん描かれたシャツを着ていった」  と言っていたので、ちょっとイメージしにくいがエクセルのワークシートみたいなシャツを着ていったのだと思う。  「俺は全身ストライプよ」  松田さんは、ストライプだったそうだ。ストライプはまあわかるが、全身ってのがちょっとよくわからない。キン肉マンゼブラみたいな状態だろうか。  二人は一張羅を着て、なぜか3つ離れた駅まで移動して相席居酒屋に行ったらしい。知り合いに見られたら恥ずかしいというのが主な理由だ。
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ついにギャルと相席し、まさかの盛り上がり
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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