ライフ

草食系おじさんが、ギャルに捕食されようと相席居酒屋に行った結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第61話>

天国と思われた時間は、一瞬にして暗転し……

 このまま幸せな時間が進行するかと思われたが、事態が急変した。  ギャル二人が、何か合図を受けたかのように同時に豹変し、完全に無表情、スマホと睨めっこを始めたらしい。  「あのさ、どこに住んでるの?」  「うん……」  「若く見えるけど何歳なの?」  「うん……」  「今日の俺のシャツ、いくらすると思う?」  「うん……」  突如として何を話しても生返事になったらしい。こちらを一瞥もせず、スマホから目を離さず微動だにしない。脳に何かを埋め込まれたかと思うほどだったと思う。  「でもな、女の子の瞳にスマホの光が映っててな、キラキラしてて綺麗なんだ、これが」  エクセルはそう言った。何言ってんだこいつ。  おそらくではあるけれども、これはギャルたちの策略ではないかと思う。たぶん、その店はチェンジシステムがあったのではないだろうか。男性が金を払い、女性が無料というシステム上、男性側にチェンジの権利が与えられている可能性がある。イマイチノリが合わない、だとかそういうのを避けるためだ。  けれども、いつでもチェンジできるというわけではなく、たぶん、席について10分以内、とかそういう制限があるはずだ。彼女たちはそれをよく知っていて、制限時間を超えた瞬間に豹変したのだと思う。もうこれでチェンジされることはない。時間いっぱいまで飲み食いできる。もしかしたらキャッシュバック的なものだってあったかもしれない。  よくよく考えれば、これはまあ、あたりまえの構造だ。なにも若いギャルはエクセルみたいなおっさんと、キン肉マンゼブラみたいなおっさんと飲みたいわけではない。何か見返りがあるから相席するのだ。それを考えれば、こんな状態になることは明白だ。  ただ、それは災難だったね、高い飲み代だったね、では終わらない“つづき”がこのエピソードにはある。
次のページ right-delta
サバンナに埋め込まれた地雷を踏んでしまったゼブラ
1
2
3
4
5
pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート