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草食系おじさんが、ギャルに捕食されようと相席居酒屋に行った結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第61話>

サバンナに埋め込まれた地雷を踏んでしまったゼブラ

 あまりに何を話しかけても生返事、ずっとスマホと睨めっこしているので、たまりかねたゼブラが言ったらしい。  「君たち、ずっとスマホばかり見て、もしかしてスマホ教の信者なのかな?」  この、絶妙にうざいセリフこそがおっさんがおっさんである証明、みたいな感じだった。ちょっとおっさんとしての才能がないとこのセリフは吐けない。  まあ、このセリフも普通に生返事でスルーされるかと思われたが、片方の女子が激怒したらしい。  「いま信者っていったか? なあ、信者っていったか?」  あれだけ、こちらに向けることのなかった視線を、今度は睨みという形でゼブラに向け、怒りだした。  「テメーは人の宗教をバカにするのか? お前は何様だ? え? お?」  どうも「信者」「宗教」みたいなワードが彼女の中の何かに触れてしまったらしくめちゃくちゃ怒りだした。ついにはゼブラ、泣き出してしまったらしい。  「自分の娘みたいな歳の女に泣かされたんよ」  そう説明しながらゼブラはホッピーのグラスを傾け、また泣いた。  「とにかく、相席居酒屋はもうこりごりだな」  エクセルもそう言ってまたホッピーを飲み干した。  なるほど、相席居酒屋とはそういう場所なのか、思っていたイメージと違うな。当時の僕としては本当に参考なったものだった。  抱いているイメージと、実際の事象が大きく異なることはよくある。チーターがシマウマを襲わないように、相席居酒屋も、そこまで打ち解けられるわけではないらしい。また一つ勉強になった。  「それでよ、あのチーター柄のバッグを持った女のあの睨みが怖くてよ」  チーター柄のバッグを持った女がゼブラを泣かせたのか。チーターはシマウマを襲わないけど、相席居酒屋では襲うこともあるらしい。また一つ勉強になったなあ、と僕もホッピーを飲み干した。 ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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