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草食系おじさんが、ギャルに捕食されようと相席居酒屋に行った結果――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第61話>

ついにギャルと相席し、まさかの盛り上がり

 店に行くとなんだか男がたくさんいたらしい。女性がほとんど来店せず、女性を求める男ばかりが次々と来店してきたそうだ。その待ち時間があまりに長く、「女を出せ」と怒り出す客までいたそうだ。この文明が発達した世で「女を出せ」というセリフを吐くシチュエーションもそうそうない。  ゼブラとエクセルは待った。とにかく待った。女性がいないんで、男性同士で相席よろしいですか? と聞かれたら毅然と断ろうと脳内シミュレーションをしながら待った。  どれくらい待ったかは言わなかったが、言葉のニュアンス的にちょっと常軌を逸したレベルの長い時間をかけて待ったのだと思う。ついに席へと通され、相席相手がやってきた。  結構かわいい、若いギャルだったらしい。  エクセルは震えた。ゼブラも震えた。こんな桃源郷があったのかと震えた。俺たちがホッピーを飲んでいるあの店はなんなんだ、そう考えると無性に悲しくなったらしい。  まあ、この話を二人がホッピー飲んでいるあの店の店主にしているのだから、二人ともまあ空気を読めないんだろうと思う。  ついに理想の展開を手に入れたと思われたが、ここで異変が起こった。ゼブラもエクセルも緊張のあまり話せなくなったらしい。  それ以上に、若いギャルと相席だーと意気込んでいたのはいいものの、共通の話題もなく、特にスキルがあるというわけでもなく、ホッピーの話くらしいしかできないので、緊張してなくとも話す内容はなかったのだと思う。二人して「あうあうあうあう」みたいな状態になっていた。  「こんにちはー」  「初めましてー!」  「すごい、おっしゃれなシャツですね」  二人の緊張とは正反対に、若いギャルは明るく、優しく、積極的だった。  エクセルは思ったという。  「なんていいコたちなんだ」  ゼブラは思ったという。  「今日はヤれる」  和気あいあいという言葉を説明するのはこのシーンを見せればいい、というほどに和気あいあいと場は進行した。お酒とはこんなに楽しいものなのだと思ったらしい。  汚いおっさんに囲まれてホッピー飲んでいるあの店はなんなんだと思ったらしい。その話を汚いおっさんが取り囲んでホッピー飲んでいるあの店でしているのだから、まあ空気読めないんだろう。
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天国と思われた時間は、一瞬にして暗転し……
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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