温泉マニアの好きな街ベスト5。1位は西郷隆盛が愛した湯
観光客で混雑する人気の街で疲れ果てるより、閑散とした地でのんびり旅ができるとしたら……? 偏愛マニアが“独断”で決めた「好きな街」へ繰り出し“新たな扉”を開けてみてはいかが?
「万人ウケしない温泉だからこそ、いい」と語るのは、『ひなびた温泉パラダイス』の著者であり、10年以上日本全国のひなびた温泉を巡っている岩本薫氏だ。
「通は古宿に素泊まりして、地域の“共同浴場”を楽しむ。豪華な食事もなければ過剰なおもてなしもない。客ウケを狙わずに淡々とこんこんと湯を沸かす。ぶっきらぼうなほうが味があります」
田舎の温泉街には“時代が染み込んだ良さ”があるという。
「鹿児島の川内高城(せんだいたき)温泉に泊まったときは、食事なしの古宿で。腰の曲がったおばあちゃんが笑顔で出迎えてくれるのですが、こたつと布団で部屋はいっぱい。でも古びたポットや掛け軸など、なんともいえない風情があってグッとくる。これだけで旅情をそそるというか、もう最高。共同浴場もどんなに古くても続いているということは、湯も上等で歴史が詰まっている証しです」
また、ひなびた温泉は、一見地味に見えても実は相当なポテンシャルを秘めている。
「熊本の日奈久温泉は俳人の山頭火ゆかりの地だったり、世界遺産の石見銀山がある島根の温泉津(ゆのつ)温泉も宣伝次第では人が押し寄せる可能性もあるのに、控えめなところが実にいい。どの温泉街もひなびたその街並みが、まるで夢と現実のはざまで見る幻のようにも思えるのです」
1)鹿児島県・薩摩川内市
西郷隆盛が愛した、ほのかに硫黄が香る昔ながらの温泉郷・川内高城温泉がある。土産物屋や食事処が並ぶ街並みはタイムスリップしたかのよう。
2)熊本県・八代市
600年の歴史がある日奈久温泉周辺には、古き良き木造旅館をはじめ喫茶店やスナックも多数存在する。個性溢れる女将やマスターの手料理を楽しめる穴場的スポット。
3)青森県・黒石市
温湯(ぬるゆ)温泉は、古くから湯治場として栄えてきた温泉街。「共同浴場を囲むように古宿が点在するのがこの地方の特徴」。落ち着いた街並みは懐郷を感じる。
4)島根県・大田市
「世界遺産の石見銀山がある街で、温泉津温泉は寅さんのロケ地でもあるんです。歩いていると街角から寅さんがひょっこり現れそうな雰囲気がいいんです」
5)千葉県・鴨川市
「つげ義春の『ねじ式』のモデルになった太海漁村。それを伝える街の小さな看板は“義治”と間違えていて(笑)。いろいろ控えめですが温泉もありファンの聖地です」
【選者/岩本 薫氏】
ひなびた温泉だけに特化したWebマガジン「ひなびた温泉研究所」を運営。著書に『ひなびた温泉パラダイス』(山と溪谷社)など
※ランキングの「地名」は、主に「駅名」もしくは「市町村」を記載。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
武骨でも時代が溶け込む上等の湯に浸かる幸せ
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