更新日:2023年05月23日 17:39
スポーツ

西島義則の鬼気迫る大減量。平成12年SG第5回オーシャンカップ

優勝戦は住之江賞金王を彷彿させる三つ巴の死闘に

平成9年(’97年)7月20日 SG第5回オーシャンカップ競走 12R 優勝戦 1 小野 信樹 32歳 岡山 A1 2 西島 義則 38歳 広島 A1 3 島川 光男 35歳 広島 A1 4 古場 輝義 40歳 富山 A1 5 植木 通彦 32歳 福岡 A1 6 今垣光太郎 30歳 石川 A1 (年齢・級別は当時・県名は所属支部もしくは出身地)  戦前の予想は西島=植木とSG初優出で1号艇の小野信樹の2着目を狙った2=5 2-1が人気筋。  抜群のピット離れを見せた2号艇西島だったが、1号艇小野信樹の必死のイン主張によって枠番通りの2コース。4号艇古場輝義と6号艇今垣光太郎が回りこみ、3号艇島川光男をどかしてそれぞれ34コースに、5号艇植木道彦はコース争いに一切参加せず。すんなり6コース回りで進入は1246/35。  1周1M、コース競りの余波で小野と西島がスリット立ち遅れ、3コースからまくる古場の上からトップスタートを切った同じ地元広島の島川がまくり、古場を引き波に沈める。  古場のまくりと、満を持して小野と西島の競る狭い空間に植木が神業的なまくり差しを決め、小野は古場の作った引き波と、速度差のありすぎる差しでできた引き波にもまれ勝負権喪失。1周バックでは植木と島川の一騎打ち、西島は3艇身ほど遅れて3着を航走していた。  いままでのパターンだと外併走の島川が植木にさばかれて脱落、植木の前回SG予選落ちのリベンジと誰もが思っていたが、展開のアヤか島川の策略か、それとも植木の失策か、これらが絡まり、運が西島に向かい始めていた。  植木から避けるように外へ流れていった島川に植木が併走し、2M内側を大きくあけるような先行2艇の航跡を西島は見逃していなかった。  その間に3艇身近く差を詰め、引き波のないまっさらな2Mを先マイ、西島の2Mターンの初動に気づいた植木が差し込む交差旋回。伸びのいい島川が再び最内を差し三つ巴のまま2周ホームを駆け抜け、優勝は3艇に絞られる。ここでも植木は島川をマーク、2周1Mまで島川の舳先(へさき)を必死に抑え込む。  競り合いで艇の速度を落とした植木、島川がターンマーク手前でセリをやめると、植木の旋回が大きく膨らむ。その内側をまるで1周1M植木が見せたまくり差しを再現するかのように、島川と植木の間を差し込む西島。  植木の上を行く高速旋回を見せ、そのままトップに躍り出ると植木に競る隙を与えずにそのまま1着でゴール。SG通算V4、前回のグランドチャンピオン決定戦に続くSG2連覇が確定した。

優勝戦結果

1着 2 西島 義則② .33 2着 5 植木 通彦⑥ .24 3着 6 今垣光太郎④ .27 4着 4 古場 輝義③ .25 5着 3 島川 光男⑤ .21 6着 1 小野 信樹① .31 連単 2-5 550円 1番人気 決まり手:抜き 「本場は盛り上がってるみてぇだな」 「あ、あれ、西島のよく言ってる柿木村のおじいちゃんかな?」 「地元選手が優勝すると、ここまでしてくれるってぇことだ」 「しかし、地元の客にしてみりゃ美談だろうけど、なんだろ? このタイミングで出てこられると、なんかぜんぶ西島を優勝させるための仕込みに感じるぞ?」 「ばっきゃろ、お前舟券とれたんだろ? 素直に一緒に感涙しておけ」  開催後、一部の心ないオケラから西島の優勝(SG連覇)は明らかに地元優遇番組の結果だという声も聞こえてきていた。  確かに、昔から地元選手を優遇する開催や番組は多々あったと思う。具体的な開催やレース名を出すのは控えるが、舟券をとっても釈然としない気持ちになったレースはいくつもあった。  しかし、今節の西島は自分のベストであろう体重から大きく落とし、優勝戦には植木と同じ体重50kgまで体重を落とし勝負に出たのだ。  それだけで十分だろう。  そんな西島義則が今年(令和2年)の2月12日から開催されたG1・中国地区選手権競走の出場者インタビューで意味深な言葉を口にした。 「中国地区選手権で宮島を走るのがこれが最後だと思うので……」  これは近々引退を示唆しているのか、それとも単に持ち回り制の地区戦で次に宮島が回ってくる4年後に出場条件を満たせていないかもしれない、という意味なのか。  競艇がどんどん遠ざかっていく。そんな言葉を感じずにはいられない。 ※平成22(’10)年度以前の話題につき当時の名称にて表記しております ※本文中敬称略
シナリオライター、演出家。親子二代のボートレース江戸川好きが高じて、一時期ボートレース関係のライターなどもしていた。現在絶賛開店休業中のボートレースサイトの扱いを思案中
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