更新日:2020年02月29日 18:12
仕事

沢尻エリカの“美人すぎる”法廷画を描いた本人を直撃「意識して観察するのは…」

小野眞智子さん:榎本さんに触発され法廷画家の道へ

小野眞智子

法廷画家・イラストレーターの小野眞智子さん

 小野眞智子さんの取材当日には、覚醒剤取締法違反(所持)疑いなどで某有名歌手が逮捕されたとの一報が出た。報道について尋ねると「仮に送検、起訴されれば、傍聴して描く機会があるかもしれません。心の準備をしておこうと思います」と語る。
押尾学事件

押尾学事件が起きた時のイラスト

 小野さんが、法廷画家の道を志したのは、前述した榎本さんとの出会いがきっかけだ。フリーランスのイラストレーターが集う勉強会で知り合い、法廷画家の仕事を教えてもらい興味を持った。榎本さんの提案通り自分のホームページに「法廷画もやります」と書き加えると、2008年にテレビ局から朝の情報番組で使う絵を描いてほしいと依頼があった。

初仕事はコピー用紙に水彩絵の具で描き、冷や汗

絵の具 都内で起きた学生の遺体切断事件の初公判を傍聴した。裁判を見ることも、法廷画を描くことも初めての経験だった。 「何も知らなかったので、スケッチブックを持参せずコピー用紙に描きました。水彩絵の具で塗り付けていったら、紙がフニャフニャになってしまって(汗)」 法廷画 今となっては考えられぬ失敗。当初から見たまま描くことだけを心掛けているが、「自分の引き出しから当てはめず、ゼロから書き起こすのはそのぶん時間がかかる」と悩む。裁判所や被告人、弁護士などをあらかじめ調べ、デッサンのイメージを膨らませておく。より短時間で仕上げるためには、下準備が欠かせない。

過度な感情移入は禁物。仕事は冷静に

法廷画 被害者に感情移入しすぎて、公判中涙を流したり、1週間近く考え込んだりすることもある。ストーカーから刺されて重傷を負った被害女性の公判では、被害者の生い立ちや事件によって夢を絶たれたことを知った。「同じ目に遭ったら、どうしようか」と年齢が近い自分との境遇を重ね合わせた。傍聴席でボロボロとこぼす涙を止めるのに必死になった。仕事は冷静にやろうと思っても、感情が入り込むことは少なくない。
植松聖被告人

植松聖被告人(イラスト/小野眞智子)

植松聖被告人

植松聖被告人(イラスト/小野眞智子)

 それでも負担よりも、やりがいの方が大きい。被告人はなぜ、法を犯したのか。リアリティーを持って語られる裁判への興味は尽きない。「事件のことを知ろうとするきっかけは、文章だけではない」。法廷画の意義を力強く語った姿が、印象に残った。<取材・文・撮影/カイロ連>
新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
1
2
おすすめ記事