長引く休校に、小学校教師たちの悲嘆。別れを惜しむ暇もなく…
学校から子どもたちの声が聞こえなくなった。新型コロナウイルスの影響は学びの場にも容赦無く襲いかかってきた。突然の休校宣言のあと、教育現場ではどんなことが起きていたのか。小学校で働く二人の若き教師に話を聞いた。
2月28日。休校前最後の登校日だったこの日、小学6年生の担任である和田絵里さん(仮名・20代)は卒業を間近に控える30人のクラスみんなで1年間の思い出の写真のスライドショーを見ていた。
「本当なら、卒業式前日に見せようと準備していたんですけどね……」
最終日は本当にバタバタで、クラスの子どもたちともゆっくり話す時間はなかったという。
「寂しいね、残念だね、と話しながらさようならしました。卒業までの大切な時間だったので、子どもたちと残りの時間を過ごせないのが心残りでした」
和田さんの小学校では卒業式は短縮で実施することができたが、修了式はできなかった。
その後、5月上旬までの休校が決まったが、和田さんにとっては、もはや想定内のことだったという。
「そんなに驚きませんでした。もちろん、新しいクラスの子どもたちに会えることを楽しみにしていたので、5月まで会えないのは残念だなと思いました。でも、今は勉強よりも何より命が大事だと思うので、仕方がないですね」
4月中旬現在、児童は登校していないが、職員はフルタイムで出勤し、低学年の預かりを当番制で行なっている。新学期からは新1年生の担任になる和田さん。入学したばかりの児童たちが元気よく登校できるよう、まずは自分が感染しないことに尽力していた。
「基本的なことですが、手洗いやうがい、マスク装着の徹底をして、外出時はアルコールスプレーを持ち歩いてます。学校から家に帰ったらすぐにシャワーを浴びて、不要不急の外出はしないようにしています」
「車の中でニュースを聞いて驚きました」
一斉休校のことは、退勤後自宅に向かう車の中で知ったという佐倉美南さん(仮名・20代)。1クラス33人、5年生のクラスを受け持っていた。車の中で「これからどうなるんだ」という大きな不安を抱いた。
休校宣言の翌朝、いつもより早く出勤すると、どの教師も慌ただしく動き回っていた。
「とにかく、一斉休校宣言の翌日は、慌ただしい1日でした。いきなりのことだったので、心と体が追いつかなかった……」
考えることが多すぎて頭がパンク寸前だったという。授業も終わってない、休校中の課題をどうするか、児童が学校に置いている荷物を1日で持ち帰れるか……急いで休校中の課題プリントを印刷しようとするも、校内の教員全員が印刷機を使おうとしていたので順番待ち。
「もう、大変だ~という気持ちでした。3月の休校が決まるのはあまりにも突然で。前日の夕方はないですよ、本当に。せめて1日は、猶予の時間が欲しかったな」
下校前のホームルームまでにはプリントなどの準備が間に合い、無事に配布できた。この日のホームルームは、新学年に上がるにあたりクラス替えを控えていたので、はからずも最後のホームルームになってしまった。佐倉さんはこんな言葉で締めくくった。
「いきなりこのクラスを閉じることになってしまい、とても悲しいです。もっとみんなといたかった。もっとみんなと笑いたかった。たくさん遊びたかったし、最後にお楽しみ会もやって、楽しい思い出を作りたかった。こんな風に終わってしまって、とても残念です」
下校していく児童を見て、あまりにも呆気ない終わり方に悲しさでいっぱいだったそうだ。1日が終わり、どっと疲れが押し寄せた。教師という仕事は忙しない日々の連続だが、この日は比べものにならなかったという。
「全国の先生たちが同じように奔走したはずです。本当にお疲れ様でした」
奪われた卒業までの日々。別れを惜しむ暇もなく……
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クラス替えでバラバラに「あまりに呆気ない終わり方で悲しい」
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5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。
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