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再放送ドラマの高視聴率で感じる「新作や新商品はこんなに必要か?」

 エンターテイメントにも大きな影響を及ぼしている、新型コロナウイルス。緊急事態宣言の発令以降、春の新ドラマは軒並み撮影中止に追い込まれ、多くの作品がいまだ初回放送のメドすら立っていない状況です。

再放送ドラマが軒並み高視聴率

 そこで、苦肉の策としてテレビ各局が過去の名作ドラマを放送したところ、大好評を博しているのです。
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 「ごくせん2002特別編」(6月3日放送、日テレ系)は12.7%の高視聴率をマークし、ツイッターのトレンドでも世界5位にランクインするほどの盛り上がりを見せたそう。  さらに時代はさかのぼって、1995年に最高視聴率28.1%を記録した「愛していると言ってくれ」の再放送(5月31日から6月21日まで4週連続放送、TBS系)では、主演の豊川悦司(58)と常盤貴子(48)のリモート同窓会まで実現し、当時を懐かしむ視聴者が続出しました。  他に、『野ブタ。をプロデュース』特別編(日本テレビ系)、『JIN-仁-』再編集版(TBS系)なども高視聴率でした。  新型コロナの終息次第ですが、このようにアーカイブに頼る状況は、もうしばらく続いてしまうのではないでしょうか。  これは、音楽番組でも同様。となると、気になるのは今年の紅白歌合戦ですよね。新曲をリリースしても番組収録やライブ活動も以前のようには行えないわけですから、出場歌手の選出や選曲すらままならない状況になると思われます。  そこで、過去のドラマが好評を博しているトレンドを受けて、紅白も過去の名場面を再編集するといった形になったとしても、全く不思議ではありません。

海外でも、懐かしい過去作品が人気

   このように、新型コロナによってもたらされた停滞で、当面のエンタメ界は懐古主義に支配されそうですが、それは日本だけの現象ではないよう。  イギリス紙「The Guardian」の電子版(4月20日)に、「We were already knee-deep in nostalgia. Coronavirus has just made it worse」(すでにノスタルジアにどっぷりと浸かっていた私達に、新型コロナが追い打ちをかけた 筆者訳)というエッセイが掲載されていました。ロックダウン中のイギリスでも、テレビやNetflix、スポーツからビデオゲームに至るまで、過去を懐かしむトレンドで溢れていたというのです。
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 Netflixでは、アメリカの大人気ドラマ「Friends」(1994-2004 NBCテレビ)のストリーミングが大ヒット。さらに、あるレトロゲームサイトは、“新型コロナの流行により、現在我々のサイトは、何も心配事がなかった時代を懐かしむレトロゲーマーたちで混み合っております”との注意喚起までしたといいます。  こうして多くの人が感傷に浸る傾向は、SNSを通じて拡散し、それ自体がひとつの時代精神となりつつあるのではないか。同エッセイの著者、オスカー・リケット氏はそう警鐘を鳴らします。経済は力を失い、国の舵取りもおぼつかない世の中を目の当たりにした不安による反動だと論じているのです。 <厳しい時代になると、確かな安らぎを感じられる場所へ逃避したいと思う気持ちは、ますます否定しがたいものとなる。あったかいお風呂のように心地よいノスタルジアは、いつでも私達を迎え入れてくれる。(中略) いま現在の楽しみを取り逃がしてしまうのではないかという恐怖心が、過去の思い出へと形を変えてしまったのである。>  リケット氏は、こうした精神性が娯楽のみならず、政治的な態度にも現れると考えているから、ノスタルジアを危険視しているのですね。“アメリカを再び偉大な国にする”とぶち上げたトランプ大統領はもちろんですが、対抗馬のジョー・バイデン氏だって、オバマ前大統領やクリントン元大統領など、旧き良きリベラルの焼き直しに過ぎない。右も左も、“何も考えなくてよかった平和な過去”にすがっている点では、同じだと言っているのです。  たかがエンタメのトレンドと侮るなかれ。ノスタルジーは厄介な病なのです。
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「新商品を買え」と脅迫する経済
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