更新日:2020年12月24日 23:25
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小林よしのり『コロナ論』が大反響「日本のコロナパニックはインフォデミックだ」

グローバルリズム信仰が“コロナ脳”を生み出した

――最近になって、ニュースキャスターの辛坊治郎氏や元大阪府知事の橋下徹氏らが、不安を煽るメディアの姿勢を相次いで批判している。 小林:わしが「新コロなどインフルより怖くない」と言い始めた3月初めは、賛同する人が誰一人いないどころか、袋叩きにされていたのにね(苦笑)。“コロナ脳”をまき散らすメディアを黙らせるためにも、実業家のホリエモンや国際政治学者の三浦瑠麗が今の風潮に異論を唱えてくれることはありがたい。  一方、保守の側から「コロナを怖がりすぎている」という主張が、ようやく上がり始めたが、当初、安倍首相に近い一部言論人は緊急事態宣言を早く発令するべきと進言していたというから、いかに場当たり的な議論なのかわかるというもの(苦笑)。その後、自称保守言論人がわしと同じような論陣を張り始めたが、要は、「潮目が変わり、こっちに流れがくる」と感じて、勝ち馬に乗る格好で、これまでと異なる発言を始めたということでしょう。 ――これまで『ゴーマニズム宣言』で、オウム真理教、薬害エイズ、従軍慰安婦、靖国、大東亜戦争……など、さまざまなテーマを取り上げ、丹念に1次資料にあたってきた。データやファクト、そして新たな視点を提示することで、固定概念に凝り固まった議論を活性化させ、問題提起を続ける姿勢は変わっていないように見えるが。 小林:『戦争論』や『台湾論』(2000年・小学館刊)を描いたときもそうだが、わしは誰もやらなかった分野を1人で切り拓いてきた。そして、そこに有望な新市場があることがわかると、後から乗っかってくるヤツが必ず出てくる(苦笑)。『戦争論』は結果的に保守を分断し、単なる朝鮮・韓国ヘイトでしかないネトウヨや在特会(在日特権を許さない市民の会)のような「鬼っ子」を産み落とした。一方、左翼はネトウヨの産みの親だとしてわしを一斉に非難した。誤読に基づく偏見だが、左翼にすればわしを攻撃するいい口実にしていた。  そして、今回の『コロナ論』もそうなる可能性が高い。今後、右派はわしに乗っかってきて、どこかから借りてきた亜流の稚拙な論を自説としてバラ撒き、一方、左派は「コロナは怖い」論に傾斜していくだろう。実際、左派の筆頭格の『モーニングショー』は今もコロナの恐怖を煽り続けている……。論壇はもちろん、国民が左右に分断されていくことが懸念される。 小林よしのり

日本で新コロとどう戦うべきか?という発想がない

――『コロナ論』では世界で唯一、ロックダウンを拒否し、緩和政策を続けるスウェーデンをクローズアップしている。7月17日、スウェーデン公衆衛生局は、「首都ストックホルムで集団免疫が達成された」と宣言したが、日本国内ではほとんど報じられず、スウェーデンはコロナ対策の失敗例と誤解している人が多い。 小林:重要なのは、新型コロナの抗体獲得率は20%だが、新型コロナに曝露されても、抗体を作りやすかったり、重症になりにくかったり、感染しにくかったりするT細胞系の免疫と合わせて40%近くに達したことを受けて、「集団免疫達成」を宣言している点だ。つまり、新型コロナの抗体を獲得することだけが、集団免疫達成に繋がるわけではなく、自然免疫や獲得免疫、さらに交差免疫によって、集団免疫を構築できることがスウェーデンの例から窺えるわけです。  ところが、日本国内ではメディアはスウェーデンの集団免疫達成をほとんど黙殺した……。ただ、現実には、岡田が『モーニングショー』で「2週間後、東京はNYのようになる! 地獄になる!!」と叫んでも、厚労省クラスター対策班の「8割おじさん」こと西浦博・北海道大教授(現・京都大教授)が「何もしなければ42万人が死ぬ」と恐怖をいくら煽っても、日本の死者数は今も超低空飛行で推移している。 「海外ではたくさんの死者を出しているから、日本も同じようになる」という単純な考え方しかできないのは、脳ミソまでグローバリズムに侵されているからでしょう。米国の死者が多い背景には、人種による収入格差や高額な医療費などの問題が横たわっていることを一切無視している。各国ごとに事情は違うのに、日本においては新コロとどう戦うべきか?という発想がまったくない。  ただ、新コロによって日本の抱える問題点が炙り出された現状は、ナショナリストを自任し、グローバリズムを否定し続けてきたわしにとっては都合がいい面もある。ずっと指摘してきたグローバリズムの問題点が、図らずも新コロによって証明されたわけだから(笑)。 ――8月17日、内閣府が公表した4~6月期のGDPは、年率27.8%減と戦後最悪の下落幅を記録。そのインパクトはリーマンショックをはるかに上回り、世界恐慌に匹敵するほどの落ち込みとなった。当然、経済苦による多数の死者が出ることが懸念されている。 小林:いまだに、経済は二の次で、一分一秒でも長く生きることが大事という主張がまかり通っている。市井の人々は生きるために経済行為をしているのに、それをカネ儲けやエゴのためにやっていると決めつけ、コロナ怖さに法的根拠も覚束ない自粛を強要し、日本人も自ら自由を放棄した。「コロナ怖い全体主義」の言論がメディアではびこり、今も「自粛警察」が我がもの顔で暴れている……。  だから、過去に『戦争論』で大論争を巻き起こしたように、わしが『コロナ論』を書いて世に問うしかなかった。今回ほど、「本」の力を信じたいと思ったことはない。戦いは始まったばかりですよ。  ツイッター上には、「『戦争論』以来、久々に「小林よしのり」を読んだ。涙が出た」と称賛する声が溢れている一方で、アンチの声も入り乱れるなど混沌としている。小林氏は、「お盆ではほとんどの人が帰省できなかった。正月までに『コロナ恐い』の空気が変わって、多くの人が故郷に帰れるようになればいいのだが……」と話すが、「新しい生活様式」「ウィズ・コロナ」「ニューノーマル」など聞きなれない言葉が飛び交い、価値観の変容を迫られた今、我われ日本人にできることは何なのか? 今一度、自分自身に問い直したい。 取材・文/斎藤武宏 撮影/村田孔明
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