「誰とも話せず言葉が出てこなく…」コロナ禍で孤立する困窮者には“居場所”が必要だ
新型コロナウィルスの影響により、人間関係の希薄化が加速した。とりわけ、生活困窮者においてこの傾向は顕著であり、経済面だけでなく人間関係にも困難を極めている。そんな中、主に埼玉県内で生活困窮者の支援をしているNPO法人ほっとプラス(以下、ほっとプラス」)では、クラウドファンディングサイト“READYFOR”にて、『コロナ禍で孤立状態にある生活困窮者の居場所をつくりたい』と題した寄付を呼びかけた。
その名の通り、生活困窮者の居場所を作るためのプロジェクトのようだが、なぜ同プロジェクトを始めたのか、ほっとプラスの平田真基氏、藤田孝典氏に話を聞いた。
まず生活困窮者の現状について知っておく必要がある。ほっとプラスのサポートを受けた60代男性の山本さん(仮名)は「2021年6月、川口市で夜回り活動をしていたほっとプラスのスタッフさんに声をかけてもらいました」と話し、生活が困窮した背景を口にする。
「過去に生活保護を受給していたのですが、私の意思に関係なく、行政の人に強制的に無料低額宿泊所に入所させられました。ただ、入所したところは相部屋で生活環境は劣悪。さらには、保護費の大半を取られ、実際手元に残る生活費は約2万5000円ほど。その後、無事に就職したのですが、コロナ禍のために営業時間短縮、売り上げも激減。雇い止めに遭ってしまい、ネットカフェや路上で生活する日々が続いていました」
精神的にも経済的にも不安定な日々が続いたという山本さん。「雨をしのげる場所を見つけることがとにかく辛かった。また、スマホがないため情報入手も困難でした」という。支援を受けたくても、スマホが無ければ情報収集も連絡もできない。生活困窮者が支援を受けることのハードルの高さを感じる。
ただ、声をかけてもらって以降、「安心して眠ることがこれだけ恵まれていることなのか、と思いました。また、ほっとプラスでは、不当にお金を取られず、住民票異動・生活保護申請・医療機関の受診・就職活動・アパートへの転居支援など、自立に向けた細かいサポートが充実しています。本当にあの時声をかけてもらって良かったです」と笑みを浮かべる。
とはいえ、物価上昇が深刻化しており、「生活保護費では生活が苦しいです」と不安感をにじませる。デフレ下での物価上昇を放置することは、生活に困窮している人に限らず危険極まりない。政府は積極的な支援策を実施する必要がある。
20代男性の近藤さん(仮名)にも話を聞く。
「建築業界に勤めていたのですが、日常的にパワハラに遭い、『このままでは心身ともに潰れてしまう』と危機感を感じていました。そんな中、新型コロナウィルスの影響により、仕事が激減して収入も減ってしまい、『都心なら仕事があるのでは』と思い、2021年秋に埼玉県に来ました。
ですが、所持金はなく、携帯料金を支払っておらず、スマホは止まっていました。ただ、Wi-Fiのあるところではネットを見ることができ、そこで支援先を探したところ、ほっとプラスが加盟している反貧困ネットワークの相談フォーマットを見つけて連絡しました。その後、自分が夜を明かしていた大宮の商業施設に、ほっとプラスのスタッフさんが駆けつけてくれ、支援を受けるようになりました」
続けて、「自分は家族とは折り合いが悪く、頼れる人はおらず、職場では暴力を受けており、居場所と呼べる居場所もなかったです。ほっとプラスに繋がることができ、何かを相談できる人がいることの心強さを感じています」と安心して生活できる喜びを語った。
そして、「自分のように支援を受けたくても、情報を知らないために支援を受けられない人は多いと思います。政府・行政には利用できる制度や情報をもっと発信してほしいです」と語った。支援制度を受ける資格があるにもかかわらず、その支援制度を知らないために、受けていない人は多い。支援制度の充実化はもちろん、質量ともに優れた発信も展開するべきだ。
スマホがないと情報収集が困難
パワハラ被害から逃げてきた若者
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