「配信レイブが私たちの取り組み方を変えてくれた」(タマネ)
――もともとステージ映えするグループという印象があるし、7月のLIQUIDROOMもカッコよかった気がするんですけど……。
ブラジル:でもアーカイブの映像を観てみたらまだまだすぎて……。
レーレ:ダンスの揃え方がイマイチだったり、声をムリヤリ張っちゃったりしてたんです。お客さんの入ったレイブなら、それも「ノリ」とか「勢い」って言えちゃうのかもしれないんですけど、画面越しに観ちゃうと雑に映っちゃって。ただ、課題が見つかったということは成長できるチャンスだとも思うので、そういう“うれしみ”はありました。
タマネ:実際レイブそのものやレッスンの取り組み方もちょっと変わりましたし。私たちはこれまで3回、同じ映像チーム、音響チームの方々と配信レイヴをさせていただいているのですが、「配信ではこう見えるから、こうしよう」みたいな話し合いをよくするようになったし、実際配信レイブの見せ方も最近は7月9日のときよりはいい感じになってきていて。メンバーの気持ちの入れ方が変わってきている感じもしています。
ブラジル:うん。私はカメラがすごく苦手で、特に3月の味園ユニバースのときはカメラを完全に無視して踊ってたんですけど、最近は「カメラの向こうにはお客さんがいるんだ」って意識できるようになったし、けっこうカメラ目線も送れるようになりました。
レーレ:私も自分の表情の変化にビックリしてます。もともと踊ったり歌ったりするのに真剣になりすぎて無表情になりがちなのが悩みで。それでも今までのレイブなら「雰囲気がある」って思ってもらえていた。「キリッとしているね」なんて言ってもらえたりしたんですけど、無表情で歌って踊ってる人の映像って本当につまらなそうなんですよ。
――ドラマや映画はもちろん、バラエティ番組やワイドショーですら、出演者って普通の人に比べると明らかにオーバーリアクションですもんね。
レーレ:ちょっと大げさにしないと伝わらないんですよね。それで表情ってめっちゃ大切なんだなということをあらためて意識できて。しかも配信レイブを重ねるごとに自然と感情を表情に出せるようになっているのが自分でも驚きだし、うれしいし、楽しいんですよね。
――先ほどブラジルさんがおっしゃっていたとおり、特に7月9日の配信レイブ以降、みなさんは『ALICE』の収録曲をどんどん解禁していて、そのレイブや7月末の先行配信された音源で新譜を聴いたいろんな人たちが、これまたかなりザワっとしてましたよね。
ブラジル:確かにエゴサしてても私をフォローしていない人が反応してくれていたり、海外の方が反応してくれたりしている気はします。そういう人が『ALICE』をきっかけにオンライン特典会でチェキを買ってくれたり、今までのシングル以上に大きな反応がありました。
レーレ:関係者の人……照明さんやPAさんやカメラマンさんが、曲が解禁されるたびに「めちゃめちゃカッコいい」「ほかの曲はどんな感じ?」って言ってくださったりもしましたし。ほかにも全然アイドルのことは知らなそうな方、たとえばDJさんなんかの「こんな子たちがいたんだ」の声も見つけたし、今までにないザワザワ感は感じています。
「アリスのおかげで私たちの世界が拡がった」(レーレ)
――その『ALICE』はルイス・キャロル『不思議の国のアリス』を下敷きにしたコンセプト盤です。グループのディレクターの田中(紘治)さんや、サウンドプロデューサーのタニヤマ(ヒロアキ)さんからコンセプトを聞かされたときの感想は?
タマネ:「MIGMA SHELTERとアリス?」「どういうこと?」ってビックリしました。
タマネ
ブラジル:私も『不思議の国のアリス』をまったく知らなかった……ただのかわいい物語だと思っていたから、サイケデリックトランスをやっている私たちとくっつくイメージが全然なくて。「あっ、MIGMA SHELTERはもうサイケデリックトランスをやめるのか」と思ってました(笑)。
――ところがかわいらしくもグロテスクで、日常と非日常のあわいみたいなアリスの物語と、「頭ぶっ壊れるまで踊れ!」をキャッチコピーに持つみなさんの相性はというと……。
タマネ:原作小説を読んだり、ディズニー版のアリスの映画(『ふしぎの国のアリス』)を観たり、デモを聴いたりしているうちに「すごい! ぴったりハマってる!」ってなりました。
レーレ:私もアリス映画をいくつか観て「これは絶対にいい感じになる」っていうワクワク感が大きくなりました。
――ブラジルさんはいつごろMIGMA SHELTERとアリスの印象のズレを解消できました?
ブラジル:私も日本語版と原書版のアリスも読んで「なるほど」と思うようにはなったんですけど、アルバムの新曲として最初に送られてきたデモが「It doesn’t matter」だったので、今度は「これ、トランス?」となり……。
――硬質な打ち込みベースではあるものの、アコースティックギターとストリングスを聴かせるメロウな1曲ですもんね。
ブラジル:なので「やっぱりトランスをやめるのか」と思ってたんですけど、2曲目にデモが送られてきたのが「Rabiddo」だったので安心しました。
――キックは四つ打ちだし、ベースはワブルしまくるし、上モノのシンセはキラキラしているし、けっこう正統派のトランストラックだったから(笑)。
レーレ:その「It doesn’t matter」と「Rabiddo」の2曲が最初に届いたことも、めちゃめちゃよかったと思って。これまでもシングルを出すたびに毎回「トランスってこんなに自由なのか」「MIGMA SHELTERの幅がまた拡がったぞ」と思っていたんですけど、その2曲を聴いたとき、さらに自分たちの幅が拡がった感じがしたので。
実際そのあとに届いたデモ曲には明るさしかないみたいな曲もあれば、暗い雰囲気の曲もあるし、ゴリゴリのギターがカッコいいハードな曲もあれば、ジャズっぽい曲もありましたし。今回のアルバムで、今まで以上にMIGMA SHELTERの世界が拡がった気がします。
――確かに今作には渋いウッドベースとピアノで始まる「Drops」もあれば、ダンストラックに突然ハードロックギターが乗っかる「Road」みたいな曲もあるし……。
タマネ:遊園地のパレードみたいなかわいい音がいっぱい使われている「Egg Head」もあるから、デモが届くたびに「なんかまたまったく違う感じの曲がきた!」って驚いて。でも10曲揃ったら、ちゃんとアリスっぽいし、ちゃんとMIGMA SHELTERっぽかったから、またビックリしました。
レーレ:きっと、そういうアルバムを作れたのは『不思議の国のアリス』をモチーフにしたからで。今までのMIGMA SHELTERだったら、突然ニワトリが鳴きだす「Egg Head」や、トランペットのソロがある「Y」みたいな曲は歌えなかった気がしますし。
――でも、ブラスをフィーチャーするのは今回が初めてではない。去年リリースのシングル曲「TOKYO SQUARE」も後半、派手にラッパが鳴っていましたよね。
レーレ:そんな私たちのやってきた音楽の幅をさらに拡げてくれたのが『不思議の国のアリス』なんじゃないかな、と思っています。「アリスの世界なんだからここまでやってもOK」っていう感じで(笑)。
――で、『ALICE』リリースをきっかけに、今後さらにみなさんに注目が集まる気はするんですけど、いまだに自粛ムードは解消されていません。そういう状況にあるこの秋以降ってなにをしましょう?
レーレ:だんだん配信レイブのクオリティが上がってきていることだし、もっとがんばるべきだな、と思っています。最近はお客さんを入れた対バンライブもちょこちょこ増えているので、配信を通じてMIGMA SHELTERを知ってもらって、現場に来てもらえたらうれしいですし。
レーレ
タマネ:いずれはやっぱりツアーを復活させたい、お客さんの前でライブをやりたいっていう気持ちがめちゃめちゃあるので、ネットを通じて私たちに期待してもらえるようになりたいし、みなさんのそのワクワクにちゃんと応えられるようになっておきたいですね。
ブラジル:それにオンラインだからこそ反応してくれる方もいらっしゃるので、配信レイブはもちろんだし、ネットでの宣伝のしかたも工夫したくて。あとはボイトレを再開したいです。今、密かにダンススタジオに通っているので、次はボイトレかな? って。
タマネ:エラい!
ブラジル:なんかホメられたので、がんばります(笑)。