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パチンコを1ヶ月ぶりに打ったら遊タイムにびっくりした話

パチンコの監視カメラに敬礼するやつはいる

 徒歩で13分。都内で暮らすには少し遠い最寄駅の真向かいに、いつも行くパチンコ屋さんがある。机の上に散らばった書類の中から会員カードを探し、小銭入れの中に乱暴に放り込む。他に用事がないから鞄も持たずに万札を1枚だけ尻のポケットに入れて家を出た。ずっと背中に仕事道具の重さを感じながら歩いていたから、体のバランスが取れなくて前につんのめりそうになった。体が軽い。久しぶりにパチンコを打つ。  店内に入る直前にイヤホンのノイズキャンセリング機能をONにする。これから楽しいパチンコライフを送ろうとしている諸君へのアドバイスだが、パチンコ屋に入る時には耳栓になるものを購入して欲しい。パチンコ台の音を聞かないのか、と思う人もいるだろうが、パチンコ屋の中の音はあまりにも爆音なので、耳を塞いでちょうど良いくらいだ。ノイズキャンセリング機能をONにしてやっと自分の台の音だけがクリアに聞こえる音量になる。健康も害さない。誰もタバコを吸わないし。  久しぶりの「出勤」に驚いた店員はいるだろうか。先月まで毎日のように通っていた人間が1ヶ月ぶりに来店しているんだ。  誰からも認知されている様子はなく、僕は新台コーナーを練り歩く。杞憂ではない。こう、パチンコ屋の店員と客はこうであるべきだ。お互いに顔を覚えているが決して交わらないこの距離感。負けて熱くなっている時も、勝ってウキウキの時も、一人の時間を尊重し合う……。  厳しい禁煙ルールによって浄化された空気。いつ催しても近くにあるトイレ。安心を思わせるほどに天井に貼り付けられた監視カメラ。  僕は1ヶ月パチンコを「寝かせた」。毎日のようにがむしゃらに打っていた1ヶ月前とは違う。運も貯めた。勝てる気しかしない。今日のパチンコは久しぶりに通っていた店への挨拶だ。 「バイト、ひと段落したよ」  と、監視カメラに一礼する。新台の仮面ライダーに座り、金を入れようとしたところで飲み物がないことに気が付く。僕がパチンコのお供に選ぶのはいつもMAXコーヒーだ。絶対に体に悪いあのジャンクな甘さが、元お坊ちゃんの僕には少し背徳的でドキドキする味だった。冷蔵庫を持っていないのでキンキンに冷やされたMAXコーヒーに口が驚く。  席に戻り、仕切り直すために今度は違う監視カメラを睨み付ける。わかってるだろうな。ここで「上手くやらなきゃ」客が一人離れていくぞ、と。人身掌握に必要なのはたくさんの感情の顔を上手く使い分けることだと、テレビか何かで言っていた気がする。  1万円をサンドに入れ、貸出ボタンを押す。コミケの朝みたいに上皿に銀の玉が流れ込む。  さあ、「寝かせた」成果を見せてくれよ。
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新システムがあったなそういえば
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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