日本の屋根から標高を叫ぶ!? 誇り高き山岳民・信州人の謎を探る
長野県第1位、日本第3位の高峰、奥穂高岳・唐沢岳
日本は国土の7割超を山が占める世界有数の山岳国。なかでも平均標高が最も高い“日本の屋根”が長野県だ。平均標高1132mで、これは東京スカイツリーの2倍弱で日本一!
山に囲まれて暮らす県民だからこその独自の生態、知っておくと会話が弾むネタの数々を紹介していく。
まずは読者にお尋ねしたい。あなたが住んでいるエリア、あるいは働いている場所の標高をご存知だろうか?
「藪から棒にどうでもいい質問を……」と思うかもしれないが、まあスラスラと答えられる人は少数派ではないか。
だが、そんなマニアックな設問に対し、正確に㎜単位とは言わずとも、そして10人中10人まではいかなくとも、多くの県民が「〇mぐらい」と答えられるエリアがある。長野県だ。
彼らと話をしていると、「ここは標高700mぐらいあるから長野市より寒い」などとサラッと標高の話題が出てきたりする。
あるいは「家より標高が低いから、会社に来ると暑い」などと同じ市内でも細かく標高の違いに触れたりする。
何せ県の平均標高も1132mと日本一。山は北・中央・南の3つの日本アルプスを始め3000m級の山が15もある。この数も日本一。3つのアルプスがあることは県民の密かな自慢のツボでもある。
ちなみに長野県は、距離にして日本で一番海から遠い(長野県佐久市田口峠付近から静岡の田子の浦間)“海なし県”だ。だが、同じ仲間であるはずの埼玉県が、どこか自虐的に海を擁する自治体へうっすら憧れを抱えているのに対し、彼らは「海、いいよね」と言いつつも決して自虐的になることはない。
山に一層の深い愛と誇りを持ち、“日本の屋根”的エリアから標高について語るのである。
「学校登山」で“ずく”を鍛え、自然の怖さを知る
そんな誇り高き山の民と語る際、標高以外にも知っておくとよいポイントをいくつかご紹介しよう。
一つがエリアごとのソウルマウンテンだ。
例えば、静岡県と山梨県が“わが地の山”として富士山を誇り、どっちから見る富士山がキレイかなどと論争したりすることはよく知られている。鹿児島ならば桜島は時に灰を降らせる厄介な存在ながら、県のシンボル的存在だ。
だが、長野県は県の区分として、別称・信州にちなんで軽井沢などがある関東寄りの「東信」、県庁所在地の長野市を中心とする「北信」、アルプスのふもとに広がる松本を中心とする「中信」、飯田を中核とする「南信」の4つに分けられ、地域の特性は大きく異なる。慣れ親しみ、誇りに思うソウルマウンテン(おらほの山)もエリアごとに違う。
たとえば、
松本っ子が推すのが北アルプスの常念(岳)。「常念が一番キレイに見える」という「常念通り」という道路があるぐらいだ。
松本っ子が好きな常念岳のご来光
北信エリアの代表的な山といえば北信五岳と称される斑尾、妙高(新潟県)、黒姫、戸隠、飯縄(いいづな)。豪雪地帯でもあるため、地元っ子のスキー・ボードコースとなっている。
その他、
「飯田のシンボルといえば風越山(かざこしやま)」「駒ヶ根からは中央アルプスと南アルプスの両方が見える」などと、各地ごとに細かいこだわりがうかがえる。
飯田のシンボル風越山で毎年行われる風越登山マラソン大会。日本一歴史のある登山マラソン大会(2020年は中止)(c)飯田市
たび活×住み活研究家。鹿児島出身の転勤族として育ち、現在は東京在住。2006年から各地の生活慣習、地域性、県民性などのリサーチをスタート。『東京ルール』を皮切りに、大阪、信州、広島、神戸など、各地の特性をまとめた『ルール』シリーズ本(KADOKAWA)は計17冊、累計32万部超を達成。18年からは、相方(夫)と組み、アラフィフ夫婦2人で全国を巡り、観光以上・移住未満の地方の楽しみ方を発信する書籍
『たび活×住み活』シリーズを立ち上げた。現在、鹿児島、信州、神戸・兵庫の3エリアを刊行。移住、関係人口などを絡めた新たな地方の魅力を紹介している。
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