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元マクドナルドCEO原田泳幸「タピオカブームが終わってもゴンチャは成長する」

原田泳幸、馬渕磨理子

飲食店のシェアリングエコノミーとは

馬渕:さまざまな施策を打たれることはわかりました。が、コロナによる飲食不況が叫ばれる中、この先どのようにそれを克服するのでしょうか。 原田:今や、飲食店はおいしいメニューを出すのは当たり前の時代です。コロナ以降は、それ以上の価値を生み出す必要があります。その一つがデリバリーです。ゴンチャではデリバリーにも力を入れていきます。さらに来年はスマホのプレオーダーを導入します。 馬渕:店舗の来客だけに頼らないということですね。ただ、UberEatsや出前館などの導入にあたり、ライダーの数に左右されるという問題が指摘されています。 原田:その点も理解しています。そこで、自前のライダーを整備する予定です。ただ、それ以上に新たな戦略を考えています。 馬渕:デリバリー以外の成長戦略ですか。 原田:はい。初めてお話しましょう。私が考えているのは、既存のレストランと提携して、レストランのキッチンやスタッフを利用して、ゴンチャのメニューを提供する「シェアリングエコノミー」です。 馬渕:飲食店のシェアリングエコノミー? 原田泳幸、馬渕磨理子原田:たとえば、お客様はUberEatsを使って、あるレストランのステーキを頼むとしましょう。すると、そのレストランのメニューの一つとして、アプリ内の画面にゴンチャのメニューも表示される。同時に、「ゴンチャ」と検索しても、ゴンチャの近隣店舗に加え、そのレストランのゴンチャメニューも表示される。これはリアル店舗でも同様です。レストランに来店したお客様は、レストランの中でゴンチャのメニューを頼める仕組みにする。これによって、ライダー、キッチン、お店のスタッフもシェアできるわけです。 馬渕:なるほど。他のレストランと提携するということですね。 原田:そうです。これを私は「ブランド・エクステンション」と呼んでいます。ゴンチャというブランドの派生的なビジネスモデルです。ゴンチャのブランドを毀損しないようなお店と契約し、例えばステーキハウスやラーメン屋などの厨房を利用して、ゴンチャのメニューを作り、お客様に提供するのです。 原田泳幸、馬渕磨理子

家電量販店のアップルコーナーをイメージ

馬渕:ゴンチャの店舗だけでしか、ゴンチャのメニューを頼めない状態を変えるということですね。 原田:家電量販店を考えればわかりやすいです。ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラの中にあるアップルコーナーを思い浮かべてください。あそこだけ、雰囲気が違って“聖域”になっているでしょう。他のメーカーの商品と一緒に並べず、ブランドコーナーとしてアップルコーナーが設置されています。あれと同じことをしたいのです。 馬渕:わかりやすいです。レストランのドリンクメニューがパソコンコーナーだとして、富士通やSONYなどの商品が並んでいますが、MacBookはアップルのコーナーに並んでいますよね。 原田泳幸、馬渕磨理子原田:おっしゃるとおり。決して、コカ・コーラとジンジャーエールと同じようにゴンチャは並ばないのです。そうやってブランドの聖域を守る戦略です。 馬渕:「ゴンチャはタピオカだけじゃない」の真意が理解できました。 原田:アジアンカフェという大きなマーケットと見据えているブランドであることをお話できてよかったです。 ゴンチャ【原田泳幸氏(はらだ・えいこう)】 長崎県佐世保市出身。1972年、東海大学工学部卒業後、日本ナショナル金銭登録機(現・日本NCR)入社。横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェグループを経て、1990年アップルコンピュータに入社。1997年より同社代表取締役社長兼米国アップルコンピュータ副社長。2004年より日本マクドナルドホールディングス代表取締役会長兼社長兼CEO、2014年にベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長、2013年~2019年ソニー社外取締役。2019年より台湾発のティー専門店「ゴンチャ(Gong cha)」を運営するゴンチャジャパンの会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)を務める。 <聞き手・構成/馬渕磨理子 撮影/山川修一>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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