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かまいたち山内健司の「ギャラ450円」時代。“カス”が本気出した意外な事件

 お笑い芸人の命運を決める「M-1グランプリ」の季節が今年もやってきた。2020年の決勝戦は12月20日。  2019年のM-1で、準優勝ながら強烈な印象を残したのが「かまいたち」だ。M-1の出場資格は「結成15年以内」なので、2004年結成のかまいたちにとって去年はラストイヤーだった。
初の著書

初の著書『寝苦しい夜の猫』を手にした山内健司さん

 2020年には冠番組『かまいガチ』(テレビ朝日)が始まり、YouTubeチャンネルは登録者70万人を超える。そのかまいたちの山内健司(39)が、初の著書で自伝エッセイ『寝苦しい夜の猫』を上梓した。今までの芸人人生や、家族や猫のことが書かれている。  今や大躍進の彼らだが、東京への本格進出は2018年と遅い。結成から数年はオーディションを落ちまくったという。山内自身が“カス中のカス”と振り返る貧乏時代と、本気を起こさせた“神のお告げ”とは――。 (以下、『寝苦しい夜の猫』から再構成、筆・山内健司。< >内は編集部解説)。
寝苦しい夜の猫

妻、子、5匹の猫と暮らす山内さん

「プレステージ」に1年間落ち続けた

 2004年、同じNSC大阪26期生の濱家隆一と、かまいたち(当時は漢字で「鎌鼬」)を結成した。  かまいたちとして挑んだ初めてのオーディションは、「プレステージ」(大阪の劇場・baseよしもとで行われていたオーディション)だった。ゴングショー形式の厳しいオーディションで、面白くなければ最後までネタを見てもらえず、すぐに不合格音が鳴らされて落選する。  初回オーディションは、秒速で落ちた。びっくりするほど秒速で落ちた。  その後も、僕たちはずっと落ち続けた。本当に受からなかった。  コンビを組んで1年以上がすぎ、また一組、また一組と同期芸人たちがプレステージに受かり出し、自分たちだけ不合格の日々。  そんなこんなで、プレステージには1年間落ち続けた。しかし1年目の最後のほうはネタの序盤で落とされることもなくなり、最後までネタをやりきれるようになっていた。大幅にネタの方向性を変えるでもなく、とにかく自分たちが面白いと思うネタでチャレンジし続けた。ただ最初の頃と少し変わったのは、自分が大好きでも客ウケの悪いボケはなるべくしないということ。独りよがりのネタだけにはならないよう、意識していた。

ついに合格。初のギャラは手取り450円だった

 そしてついに合格の日はやってくる。  俳句を読みながら料理をするという、今思えばわけのわからないコントだが、五・七・五の俳句でしゃべるボケのコントみたいなパターンがこのときのマイブームで、その完成形のようなコントだった。 「これでダメならブチギレや」  それくらい手応えがあった。実際客ウケもよく、最後までネタをやりきれた。  僕がネタのオチを言った瞬間――。  テレレレテンテレンテテテッレーン、チャンチャン !!! ついに合格音が鳴った!  2人とも小さな昇龍拳みたいな動きになって、拳を突き上げた。吉本の最下層のオーディションではあったが、このとき自分のお笑いが初めて吉本に認められた気がした。プレステージに受かり、ようやくかまいたちは吉本所属【のような】形になった。  今でも覚えてるが、吉本から最初に振り込まれたギャラは、500円だった。みなさんも聞いたことがあるかもしれないが、吉本の若手芸人へのギャラの安さはウワサ通りで、本当にワンステージ500円だった。さらにそこから源泉徴収なるものを引かれていて、手取りは450円。でも、とんでもなくうれしかった。僕たちがまじりっ気のないお笑いで得た、初めてのお金だったので。
寝苦しい夜の猫

愛する猫たちと。『寝苦しい夜の猫』より

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借金150万円のカス時代
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寝苦しい夜の猫

お笑いコンビ『かまいたち』の山内健司による初の著書。 この本は山内の飼い猫“にゃんじ"が見聞きした様子を綴ったエッセイである。
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