更新日:2021年02月20日 12:18
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今年最初のG1「全日本選抜競輪」は南関移籍の深谷知広に注目

 アスリートか、競輪一筋か……近年の競輪界を初心者に説明するならばこの一言に尽きる。自転車競技の側面もある競輪は今、自転車競技のトップアスリートVS競輪専任の選手によってトップクラスのG1戦線を二分している状況だ。そして今年最初のG1「全日本選抜競輪」が川崎競輪場で2月20日~23日の4日間開催される。残念ながら首都圏川崎での開催のため無観客開催となるが、ネット中継なのでネット投票でどこでも気軽に観戦が可能だ。
競輪

オリンピック種目としても注目を集める競輪(写真はイメージ)

 在宅でのエンタメとして注目を浴びる公営競技だが、競輪は特に選手を知る意味は大きい。そして今回の全日本選抜競輪の特徴はオリンピックを控えているためにアスリート組の脇本雄太選手・新田祐大選手が出走しないということだ。つまり競輪一筋の選手たちにとっては「今がチャンス」とばかりに虎視眈々とタイトルを狙いたい状況。今年1年の競輪を占う意味でも注目のG1であり、初心者が選手を知るにもうってつけだ。

競輪版ストーブリーグ最大の話題 深谷知広が移籍した南関に勢い

 まるでサッカーやプロ野球のように競輪も移籍がある。結婚や引っ越しなどで住所が変わり所属している地区を移動することがあるのだが、競輪の場合は主に地区でラインを組んで戦うため、チームを移籍するようなインパクトが発生するのだ。  そして今年衝撃の移籍があった。G1を2回優勝している中部地区豊橋の大砲・深谷知広選手が静岡に移籍したのである。静岡は競輪では南関東地区。その南関東地区は長いこと冬の時代が続き、G1優勝も他地区選手との連携だったり、単発での強襲によるものだったりと地区としてなかなかG1戦線の決勝で戦えない日々が続いている状態だったのだが、昨年末、競輪祭を神奈川の郡司浩平選手が、KEIRINグランプリを千葉の和田健太郎選手がそれぞれ南関ラインで参加した状態で立て続けに優勝し、長い冬を抜けて春がやってきたのである。  今回の全日本選抜で南関勢は全地区中最多タイの18名が参加予定で、もちろん深谷・郡司・和田に加えて競輪祭でラインの先頭を走り、G2ヤンググランプリも勝った松井宏佑もいる。筆者は個人的に注目するのは松谷秀幸選手だ。元ヤクルトスワローズの投手から競輪に転身。現在は人の後ろを走るマーク戦も増え、現在勢いのある南関の自力を支えつつ差し切りで優勝を狙えるチャンスが巡ってきた。ラインを固める後ろ回りの選手のなかではちょうど脂の乗った38歳という年齢で今年が勝負。南関・川崎開催という地の利もあり、これまで「南関は一歩足らない」の常識を覆した結果が昨年だけではなくホンモノだというのを見せつけられるだろうか。

アスリート組がいなければ一番強い中国勢

 昨年のG1戦線がアスリート組VS競輪一筋組だったなかで、競輪一筋組の中心を担っていたのが中国勢だ。昨年前半のG1、G2戦線ではオリンピック延期前に調整中で出走がなかったアスリート組を尻目に広島の松浦悠士選手と、山口の清水裕友選手がそれぞれG1とG2を一つずつ優勝しており、昨年の再現ならば今年も前半はこの二人でタイトルを総なめにする可能性もある。  この2人がタッグを組んだ際はどちらが前か後ろであっても綿密な作戦のもと、スタミナの保つ航続距離を計って仕掛けどころを間違えない。レースが終わったあとゴールから逆算してリプレイを見れば、その仕掛けタイミングの絶妙さを納得できるのではないだろうか。  今回の全日本選抜でも2人は出走する予定だ。隣接する四国地区とは選手数が少ない時代から交流があり連携も多く、かつての「駒不足」に悩まされた姿はもうない。中国勢には岩津裕介、柏野智典、桑原大志といったベテランマーク勢も豊富でライン戦には困らないし、共闘関係の四国地区には原田健太郎、小川真太郎、太田竜馬とラインの前で戦える大砲揃いだ。  かつては脇役だった南関と中四国が、今の競輪界で主流になるという逆転現象の真っ只中なので、競輪をこれから知る方も激動の今を見逃してはならない。
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平原康太に熱視線
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公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。
Twitter:@signalright

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