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10年後には満員電車がなくなる?鉄道イノベーションの具体策とは

生活様式や価値観が目まぐるしく変わる現代。コロナ禍により移動が蒸発し、鉄道各社の経営は軒並み苦しいなか、大都市の満員電車の密集はもはや許されない。また、大都市から地方へ移住したくとも、鉄道が1時間に1~2本では、クルマが成人一人に1台必要で費用がかさむ。大都市も地方も、鉄道を便利に利用し、かつ鉄道会社の経営を好転させる方策はないのか。

着席型通勤電車で増収、「中速新幹線」導入で往来も活発に

生き残り戦略

10年後には満員電車がなくなる?

 鉄道・交通コンサルタントの阿部等氏は、鉄道会社が新しい生活を切り開くチャンスだという。 「鉄道会社の経営悪化は誰しも知るところ。利用者メリットのある着席や新駅の割り増しへの理解を得やすい状況です。着席は立席より商品価値も生産コストも高く、値段が違って当然。新駅の利用が今ある駅より多少高くなっても、クルマの費用と比べれば安いもの」  現在、着席と立席は同額なので、鉄道会社は着席サービスに対する売り上げを取りこぼしている。 「首都圏の鉄道売り上げは年間3兆円で、平均単価200円。例えば4人に1人が着席割増料金を320円払えば、平均単価が40%向上し1.2兆円の増収です。それを原資にラッシュ時に増発する方向にし、全体の混雑を緩和しつつ提供座席数を増やせます」
生き残り戦略

阿部氏提案の「着席型通勤電車」のイメージ。著書『満員電車がなくなる日ー鉄道イノベーションが日本を救う』(角川SSC新書)より

 高度経済成長期から50年変わらなかった、首都圏の苛烈な通勤地獄はコロナを境に、今後10年で「過去の遺物」となるかもしれない。

地方鉄道は有人自動運転化が理想的

 地方の鉄道は本数が少なく駅間が長く、使い勝手が悪い。阿部氏は、AIカメラで障害物を検知し人件費が低額のシニア監視員が同乗する有人自動運転化が理想的だと言う。 「線路内へ侵入できない神戸ポートライナーなどは40年前から自動運転。地方の鉄道は有人自動運転により数倍の運行ができる。同時に市街地は駅を1kmおきに増やすことで利用は数倍に。新駅割り増し運賃と併せ大増収でしょう」  阿部氏はさらに、新幹線建設の5分の1の費用で在来線の線路と車両を改良し、時速200kmで走行する「中速新幹線」を提案する。これで地方と大都市の移動時間を大幅に短くできるのだ。  10年後、全国に張り巡らされた鉄道網は再び移動の主役となる。
阿部 等氏

阿部 等氏

【鉄道・交通コンサルタント・阿部 等氏】 東京大学工学部都市工学科卒。JR東日本にて鉄道事業の実務と研究開発に17年間従事した後、’05年に交通問題の解決をミッションとしてライトレール社を創業 <取材・文/武馬怜子(清談社)>
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