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バックトラッキング、ミラーリング会話テクがウザい理由

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第253回
佐々木

写真はイメージです

テクニックに偏ったコミュニケーションは簡単に見透かされる

 相手の言葉を繰り返す「バックトラッキング」という会話テクニックがあります。このテクニックは相手との親密度を高める効果があるとされていて、恋愛や営業の入門書でよく紹介されています。いわゆる「オウム返し」です。  ある20代の男性は、出会い系アプリで知り合った女性とのやりとりで、このバックトラッキングを試みました。ところが、それを相手の女性に悟られてしまい指摘された挙句、「あなたは相手のことを考えていない」とダメ出しを受けました。こうした失敗談は珍しくありません。バックトラッキングはGoogleで検索すると、「うざい」とサジェストされるくらいに知られたテクニックだからです。  ただ、こうした失敗談は会話テクニックの効果を否定するものではありません。問題なのはテクニックを使う頻度です。野球でもストレートばかり投げていたら、タイミングを読まれて打たれてしまいます。カーブやフォークといった変化球を織り交ぜるからこそ、まっすぐなストレートも決まります。それと同じで、相手の言葉を繰り返すにせよ、相手に質問して話を聞き出すにせよ、テクニックに偏ったコミュニケーションは簡単に見透かされてしまいます。

うわべのテクニックは無意味

 では、会話テクニック以外に何を使えばよいのかというと、それは「共感」です。自分にも似たような体験があるかもしれない。そう考えながら相手の話を聞いていると、自分の過去の体験や、その時の感情や思考がよみがえってくることがあります。この自分の体験と感情と思考について話すことが、ストレートに織り交ぜる変化球になるのです。 「自分にも似たような体験があったかもしれない」という共感も、それ一辺倒になるのはよくありません。そうすると今度は「すぐに自分語りが始まる」と思われてしまうからです。時には聞き役にまわり、時には話し役に回る。その柔軟性こそがコミュニケーションの醍醐味であり、自分を魅力的に見せる手段です。形式化したテクニックは役立つ場面がある一方で、こうした柔軟性を損なう恐れがあります。  相手の言葉やしぐさをまねるバックトラッキングやミラーリングといったテクニックは、もともと親しい人間同士のコミュニケーションを研究して考案されたものだと言われています。実際に自分の親しい友人や家族とのやりとりを観察すれば、自分や相手が無意識にそうした行動を取っている瞬間がたくさん見つかります。
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共感を意識しよう
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コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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