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『論語と算盤』の渋沢栄一が「論語で商売をする」と決心したワケ

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第250回 渋沢栄一

商売人を目指した理由

 大河ドラマ『青天を衝け』の主人公になった渋沢栄一は、もともと大蔵省で役人をしていました。それが「今の日本には政治や教育の改善も必要だが、商売が振るわなければ豊かにならない」と考えるようになり、自分が商売人になる決心をしました。  この時、渋沢が商売の拠り所にしたのが『論語』です。論語は中国春秋時代の思想家である孔子の言動について、その弟子たちがまとめた書物です。日本は歴史的にこの論語の影響を強く受けています。渋沢もその影響を受けた一人であり、自伝のタイトルにも含めています。それが近年ブームになった『論語と算盤』です。

渋沢栄一と『論語』

 渋沢栄一は商売を始めるにあたって、以前に学んでいた論語のことを思い出し、「論語には日常の教えが説いてある」「論語は最も欠点の少ない教訓である」「この論語で商売はできまいか」と考えました。そんな折に、とある出来事が起こります。それが玉乃世履(たまのよふみ)との衝突です。  玉乃世履は渋沢と同じ明治政府の役人で、後に大審院長まで登りつめた裁判官です。「役人を辞めて商人になる」という渋沢の噂を耳にした玉乃は、「君も遠からず長官になれる、大臣になれる」と渋沢を引き止めました。  この時、玉乃は「賤しい金銭に眼がくらんで、役人を辞めて商人になるなんて呆れる。君をそういう人間だとは思わなかった」と渋沢を批判します。「商売が日本を豊かにする」と考えていた渋沢は、論語を引き合いに出して「金銭を扱うことがどうして賤しいのか?」と反論し、「私は論語で一生を貫いてみせる」と宣言しました。
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信念は他人から生まれる
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