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SKE48高柳明音がまっとうしてみせた”アイドル”という存在

卒業コンサートがもたらした“兆し”

 そして高柳の卒コンはグループにとって、2000年2月15日の静岡エコパアリーナのコンサート以来の大箱のライブでもあった。一人の功労者が卒業するという意味に加えて、SKE48にとっても大きな意味を持っていた。 SKE48高柳明音 コロナ禍ライブがリモート配信になってしまう状況が続き、ファンたちももどかしい思いをしてきたが、それはアイドルたちも同じ。  コロナ禍においても続いていたSPA!本誌の連載「ずぶ濡れSKE48」の取材をするなかで、「応援してくれるファンのみんながいてくれたことで、自分たちはアイドルでいられたのだと再認識した」「早くファンのみんなの前でライブをやりたい!」という声を数多く聞いてきた。  だからこそ、約1年ぶりにステージでパフォーマンスを披露して、声援を浴びることで笑顔を見せるアイドルたちの姿は生き生きとしており、ファンたちもこれを待ち望んでいたのだと言わんばかりの、大きな拍手を何度も送り、声が出せないながらも会場の熱気を感じられるライブとなっていた。  バラードアレンジされた『愛の数』をソロで歌い上げた後の2曲目『兆し』では、旗を持ったグループのメンバーたちが太鼓の音に合わせて行進しながら入場。 〈今 僕たちは校舎の屋上に集まり 夜明けが来るのを一緒に待ってた〉。こんな一節から始まるこの曲の歌詞は、長い間多くの観客の前でパフォーマンスできなかったアイドルたち、そしてその姿を現場で目撃できなかったファンたちの状況と重なる。  だからこそ、卒業コンサートのラストでの「最高のライブだったー!」という高柳の叫びに対して、1年以上、モヤモヤを溜め込んできたSKE48の全メンバー、そして会場に集まったファン、配信を見ているファンたちが全力でうなずいていたことだろう。  ライブのタイトルの通り、SKE48のメンバー、ファンひいては関係者たちにとっても明るい”兆し”が見えるライブであった。 SKE48高柳明音

1年半前と変えなかったセットリスト

 卒コンならではなお涙ちょうだいのMCもなく、ライブ前のオンライン囲み取材で意気込みを聞かれた際にも「自分の思いは全てセットリストに込めたので、ライブを見てほしい」の一点張り。  実直で不器用なのはわかるが、少しは語ってくれてもいいのでは……。そう感じた取材陣もいたはずだが、いざライブを見れば、そんな思いは吹き飛んだ。  チームKⅡのオリジナル公演やAKB48の選抜総選挙でランクインした際に参加シングル、兼任したNMB48まで、彼女が辿ってきた道や歴史を網羅しつつ、それぞれの曲が一緒に出演するメンバーへのメッセージでもあったのだ。 SKE48高柳明音 このセットリストは、約1年半に作った内容から「99%変わっていない」とのことで、一度決めたらやり抜く有言実行の彼女らしい一面が垣間見える。  自分のファンなら、SKE48が大好きな人たちならわかってくれるはず。そんな思いを込めつつ、ファンたちにそれを読み解く楽しみも残すあたり、ニクい演出だ(その4日後、思いつきで急遽YouTubeライブにて夜の21時から日付をまたいで『緊急生配信! 高柳明音卒業コンサート あかねまちゅり大解説!!!』で全解説を行うあたりも実に彼女らしい)。  そんなライブを繰り広げた後だからこそ、最後の劇場公演では、涙を流しながら溢れ出す思いを何度も言葉にする様子は、胸を打った。
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最後の「ラムネの飲み方」
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