エンタメ

SKE48高柳明音がまっとうしてみせた”アイドル”という存在

最後の「ラムネの飲み方」

 黄色いTシャツで会場が埋まった4月27日。卒業公演のセットリストはもちろん「ラムネの飲み方」。 SKE48高柳明音 ファンにとっては言わずとしれたSKE48チームKIIの3rd公演であり、チームにとって初めてのオリジナル公演。2011年のAKB48選抜総選挙で23位にランクインした際の壇上で、秋元康に「私たちに公演をやらせてください」と涙を流して直訴したことがきっかけでつくられた公演である。  先輩のチームSが次々に新しい公演を行うのを横目に、報われない日々が続く。そんな状況で作られた公演を象徴する『お待たせSet list』を4曲目に披露した際には、涙ぐんで踊っていた高柳。直後のMCにて涙の理由をこう語った。 「この曲をいただいた当時『おまたせ! みんな待っててくれてありがとうって気持ちを、何年先までも、新鮮な気持ちでやっていけるのかな、いつまで歌い続けていけるのかな』 って思ってたんですけど。今日この曲を歌ったとき、ああ、これが一つの完成形なんだって思いました」  この言葉は、12年間常に全力でやりきった証だ。後のMCでも「後悔はない」と言い切った。 「SKE48に入って、センターになりたいって言えなかったんですね。初期から目の前に立ってきたWセンターを見てるからこそ、簡単には言えなくて。ファンの人たちから『明音ちゃんのセンターが見たかった』と言われた時、1回くらいそう言えばよかったかなって思った。でも、時間が巻き戻っても、言わないと思う。それは、いまこの瞬間に後悔がないからです」 SKE48高柳明音

私にとっての宝石

 アンコールで自身の卒業曲『青春の宝石』を歌った後には、「私にとっての宝石は、自分の記憶や思い出に重ねて歌ってきたけど、今日はみなさんの存在一つひとつが、私にとっての宝石だなと思って。ここは宝箱みたいだなと思っちゃいました。ちょっとくさいけど」と歌詞になぞらえて感謝の気持ちを語るが、少し照れが見え隠れする話しぶり。  アンコールで全ての曲を歌い終え、最後の挨拶では、涙で声を詰まらせながら、ラストにふさわしい素直な気持ちを語った。 「いつも恥ずかしくて言えなかったけど……みんなのことが……本当に大好きです。みんながいてくれたから頑張れました。その分、これからも恩返しをしていきたいと思います。みんながかけてくれる『明音ちゃんがいたから頑張れた』『救われたよ』って言葉に、私も救われました。生きててよかった、生まれてきて本当によかったって思いました」 SKE48高柳明音 誰かを救い、救われる関係性――。現場の当事者たちにとって、“不要不急”とはいえないのではないか。そんなコミュニケーションを積み重ねてきたアイドルとファンの絆が感じられる卒業コンサートと卒業公演であった。 取材・文/森ユースケ 写真/©2021 Zest,Inc
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ