仕事

地方議員は正直おいしい? 兼業の写真家・伊藤大輔が語る二足のわらじ生活

写真家と地方議員の活動

「写真に関してはビジュアル芸術として割り切っている。キャプションや文章は、学生時代から苦手意識もあって、一切書いてこなかった。  でも、ずっと頭の中にあったことをアウトプットしたいと思った。自分に言いたいことや思いがあれば、あとはシンプルに伝えるだけで。自分が議員になって経験してきたことや考えてきたことを、飾らずに書いた」  議員の仕事だけでもなかなか大変なようだが、『クレイジージャーニー』で伊藤氏を知る人は、最近の写真家としての仕事についても気になるところだろう。 「作品撮りやプリントとかは議会が終わって時間ができたらしていて。インバウンドが盛り上がっていたコロナ前は、日本の観光地にいる外国人観光客の様子をスマホで撮るみたいなコンセプトで撮っていたんだよね。しばらく日本にいなかったし、日本を再発見する意味でも新鮮だったから。今はコロナ禍でなんとも言えないけど、写真展の会場も探しているところ」
ファベーラ

伊藤氏が撮影したファベーラの様子。写真は『ROMÂNTICO』(イースト・プレス)より

 ブラジルのファベーラではスマホを出して気軽に撮影できない環境だっただけに、日本の観光地で自由に写真を撮れるおもしろさも感じたという。そうした作品のコンセプトは、伊藤氏が地方議員としても大切にする“よそ者の視点”にもつながるんだとか。 【参考記事】⇒クレイジージャーニー出演の南米スラム写真家が日本で地方議員になったワケ 「写真家としては誰も撮ったことのないものを撮りたいという意識は当然あるし、わかる人がわかればいいとも思う。  一方、議員活動に関しては、純粋に現状を変えたいという思いが強いので、“数の原理”を実感しているところ。政治の世界は最大公約数的なものの伝え方というか、良くも悪くも本当にシンプルなメッセージしか多くの人には伝わらない。そういうこともわかった上で、おべんちゃらは言わず、空気を読まずにやろうかなとも思っているんだけどね」  伊藤氏は現在の地元有力者を中心とする偏った議員構成を変えていく活動として、議員の新しい「なり手」を探す“リスペクト運動”を掲げている。幅広く一般市民の代表として、普通のサラリーマン、デザイナー、管理栄養士、システムエンジニア、移住者など、全国津々浦々の人に声をかけ、すでに立候補に向けて動き出している者までいるという。

市長選も見据えて

伊藤大輔 伊藤氏の行動力の源を聞くと、「間違いなく怒り」と即答した。 「怒った時のパワーを原動力にしてきた感じはあるね。写真にしても『俺はこんな写真しか撮れないのか』みたいな気持ちをぶつけてきた。立候補する時も『俺が直接議会にいって話をつけてやる』みたいな。  まだ議員になって2年も経っていないけど、意識していなくても物理的に同じ空間を共有しているだけで、人間ってお互い影響されていくものだと思うし、初心は忘れたくない。公職である以上、自分のケツの拭き方だけは常に考えておかないといけない。10年やって結果を出せなかった人が、11年目に違う結果を出せると考える方が不自然だからね」  まだ2年以上の任期が残るなかで気の早い質問だが、2期目の選挙も考えているのだろうか? 「議員としてはまず仲間を増やしていかなきゃいけないし、来年は市長選もあるから、そのチャンスは見逃したくないよね。無謀な戦いしてもしょうがないけど、選挙はそのときの風向きとかもあるから。議員をやっていると、市民からいろんな声が寄せられるけど、俺は無所属のピンの状態で議会にその声を届けるということはできても、基本的に反対勢力と見なされて、それで話が終わらされてしまうことも多い。その点、最大会派は数の力で議会を動かしやすいんだけど、ローカルは、やっぱり市長の力が大きいね。俺はとにかく今の現実を変えるために政治家になった。そのための現実的な方法を常に探っているよ」 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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