野党や有識者の反対相次ぐ「入管法改悪」
3月に名古屋入管で亡くなったスリランカ人女性が嘔吐や吐血のためバケツを抱えていたとされることから、バケツを抗議シンボルにして座り込む男性(5月12日、参議院議員館前で)
衆議院法務委員会で与党が採決を目指している
入管難民法の改正に反対し、5月12日に参議院議員会館内で、元収容者や支援者たちが緊急の記者会見を行った。改正には野党が強く反発しており、この日の採決は見送られたものの、14日の強行採決もありうることから関係者の緊張が高まっている。
この法改正は、外国人の入管施設への長期収容を解消する名目で、
退去(出国)しない人への罰則を定め、また
難民申請を3回以上行った人を送還することを可能とするもの。
また弁護士や支援者等が「監理人」となって対象者の状況を入管に報告することで、対象者が施設外で生活できる「管理措置」の新設も含まれ、虚偽の届け出等については「監理人」への過料も設定されている。入管による
対象者への監視を支援者に罰則付きで代行させる仕組みだ。
5月12日、記者会見とほぼ同時刻の参議院議員会館前
かねてより改正に抗議するデモ行進が都内で行われ、現在国会前では改正に抗議する座り込みも行われている。11日には国際法などの専門家124人が改正に反対する記者会見を開いた(
5月12日朝日新聞デジタル)。立憲民主党など野党も強く反発。改正案の採決に応じない構えを見せている(
5月12日時事ドットコムニュース)。
会見する織田朝日氏(左)とペニャ氏(右)
今年3月に名古屋出入国在留管理局に収容されていた
スリランカ女性ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった。体調不良にも関わらず必要な治療や栄養補給がなされていなかった疑いが指摘されており、野党はこの問題の真相究明を求めている。
野党の抵抗でひとまず回避されたものの、一時は5月12日に強行採決が行われるのではないかとの憶測もあり、支援者たちの間で緊張が高まっていた。そんな中「
入管収容施設面会ボランティアの会」が開催したのが、12日の緊急記者会見だ。「牛久入管収容所問題を考える会」「SYI収容者友人有志一同」「編む夢企画」の関係者や元収容者が、収容現場に近い立場から法改正と現状の問題を語った。
「難民の人たちは、
自分の国に帰りたくても帰れない。それを犯罪者とレッテル貼っていいのか。(難民以外の)オーバーステイにも複雑な事情がある。日本にいて、虐待等の問題によって離婚したためにビザが取れなくなった人もいる。(こうした事情で)日本生まれ・育ちでも国籍やビザがない子供がいて、大人になって収容されてしまったクルド人もいた。国籍やビザがない。それが犯罪者なのか」(織田朝日氏、SYI収容者友人有志一同・編む夢企画)
「2018年から、
東京オリンピックのための外国人対策として、仮放免中の人の動静を把握しろ、仮放免者を徹底的に絞れということになって、全国で長期収容が非常に増えた。コロナによって、密を避けるため仮放免が出るようになったが、長期収容者から先に出しているわけではない。
いまでも
牛久入管で一番内外収容者は
ネパールの人は7年、カシミールの人は6年。カシミールの人は、中国・インドに挟まれた大変な所で、(入管法が改正されると)こういう人が帰らないと言ったら送還忌避罪で1年刑務所に入れられかねない。日本語学校も出ている
カチン族(ミャンマー)の人は、ビザ更新日に熱が出て行けず、翌日言ったらビザを取り消されて2年近く収容されている。
入管法っていったい何なんだ」(田中喜美子氏、牛久入管収容所問題を考える会)
日本で頑張って働いてきたのに…
会見に同席したチリ人のペニャ氏は、日本で料理人として働いていたものの保証人がいなくなったためにビザを失い、収容されたという。
「日本で頑張って働いてきたのに、
トラブルでビザを失ったからオーバーステイは犯罪者だという概念がダメだと思う。ペニャさんは難民です。帰ったら命が危ない人で、難民申請もしています」(前出・織田氏)
「今月で私は仮放免されて1年です。全く働いていません(仮放免の条件として就労を禁じられている)。入管が定める仮放免のルールは全部守っています。弁護士の先生が私のためにビザを得るために戦ってくれているからです」(ペニャ氏)
ふじくらよしろう●
やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:
@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『
「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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