更新日:2022年03月12日 11:09
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「自殺未遂をくりかえす外国人も…」牛久入管の悲惨を、隠しカメラが捉えた

茨城県牛久市にある東日本入国管理センター、通称「牛久」。在留資格がない、または在留資格の更新が認められず国外退去を命じられた外国人を"不法滞在者"として強制的に収容する施設は、全国に17カ所あります。そのなかでも、牛久入管は「送還可能なときまで」、つまり期限の定めのない収容が認められている施設です。
トーマス・アッシュ監督

トーマス・アッシュ監督

2000年に日本に拠点を移して以来、原発事故後に不安を訴える福島の子どもや親たちの声に焦点を当てた『A2-B-C』(13’)などを発表してきたトーマス・アッシュ監督は、2019年秋から牛久入管での面会活動を開始しました。その後、隠しカメラで収容された外国人との面会時の様子を記録し、映画『牛久』を2月26日に公開(シアター・イメージフォーラム他、全国順次公開)。トーマス監督に映画製作のきっかけや入国管理制度の問題点などについて話を聞きました(前編)。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

「なかったこと」にされないように撮影開始

――なぜこの牛久の問題を取り上げようと思ったのでしょうか。 トーマス・アッシュ監督(以下、「トーマス」):私はクリスチャンで教会に通っています。教会には、茨城県の牛久市にある東日本入国管理センターに収容されている人たちをサポートするボランティアスタッフたちがいて、彼らは牛久に行って施設にいる外国人を励まそうと定期的に面会をしています。 2019年の秋に教会の友人に誘われ牛久へ行き、教会のボランティアとして、収容されている人たちに面会しました。そこで、難民申請が認められずに長期間収容されている人たちに出会い、大変衝撃を受けました。 映画にも出ている被収容者の方が、「自分は2年しか、ここにいない」、「半分以上は4~5年いる」と話していますが、何年にも渡る理不尽な収容に抵抗するために、ハンストをする人たちや病を抱える人、自殺未遂を繰り返す人たちもいました。その時「彼らはいつか死んでしまうのではないか」という危機感に襲われました。
牛久 main1

映画『牛久』より。以下同

そこで、何かあった時に「それがなかったこと」にされないように、証拠を残そうとカメラを回し始めました。 もちろん、日本には20年程住んでいるので、入管内で行われていることについては、ニュースなどで耳にしていました。ですが、ここまで酷いことが行われているとは思いませんでした。

長期収容が可能なシステム

――刑事手続であれば人身の自由を奪う行為は裁判官が発布する令状がなしにできません。ところが、入管の手続においては外国人の身体拘束に令状は不要とされており、行政職員が行っています。 司法によるチェックの入らない身体拘束は例外的に行われるべきですが、国側は収容目的を「在留活動の禁止」にあるとし、裁量を広く行使している印象があります。外国人に対する収容のあり方や手続きの問題点は何だと思いますか。 トーマス:日本の問題点は、まず、第一に「収容」しようとすることです。在留資格がない人をすべて収容しようとする。つまり、収容することがメインになっていて、収容されている方々の身に何かあったときに「仮放免」しようという考えに基づいていると思います。 ――いわゆる、「全件収容主義」ですね。 トーマス:そうです。一方で、他の多くの国では「全件収容主義」は採用されていません。収容しなければいけない理由がない限り、できるだけ収容しないという方針が取られています。日本はその逆になっているんですよね。
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警備官の暴力が許される土壌
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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