更新日:2021年05月21日 21:00
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オリンピックは儲からない。それでも開催するべき理由 飯田泰之×猫組長

景気回復も五輪もコロナ収束が大前提

五輪猫組長:なるほど、それは納得ですね。金融政策はどうでしょうか。日銀によるゼロ金利政策と株の買い支えによって、日経平均は3万円台を一時回復。米国NYダウ平均も過去最高値を更新しています。 飯田:今がバブル的な状況かというと、そこまでではないというのが私の見方です。国債利回りがゼロ%の現状で、日経平均のPER(株価収益率)の逆数、つまり株式益利回りは4%台。この差が3%を切ってくると、ちょっと不安になりますが……バブル期の1%と比べたら、まだまだ健全な数値です。でも、実際にプレーヤーとして市場に参加している猫組長さんは、どうお考えなのでしょうか。 猫組長:僕ら投資家の目線から見れば、明らかにバブルです。超金融緩和バブルと言っていい。米国ではGDPの25%、日本でも15%もの経済政策が行われ、そのカネが株式市場に大量に流れ込んだ結果の株高であって、実体経済とは大きく乖離しているのは明らかです。  5月7日に公表された米国の雇用統計は予想をはるかに下回っていたのに、金融緩和や手厚い失業補償が続く期待から株価は上昇。「悪いニュースは良いニュース」と捉えられてしまう。あり得ない状況ですが、これが永遠に続くわけはない。  すでに米国ではインフレ懸念が見え始めている。インフレを抑制するには金利を上げるしかない。そうなれば一気に今のバブルは弾けますよ。 飯田:世界各国はリーマンショックの経験から、金融システムを安定させるためにはいくらでも公的資金を注ぎ込むようになった。そのため金融危機型のクラッシュはないかもしれません。ただ、コロナの影響を強く受ける中小企業経営者のような“中金持ち”が没落すると、ゆっくりと大企業の業績も落ち込んでいく。だからこそ、経済対策はピンポイントでやらなきゃならないと言っているんです。 猫組長:あまりいいたとえではないですが、“地雷”と一緒。致命傷を与えずに、多くの戦闘力を奪っていく。いつかツケは払わなければならない。いずれにしても、景気回復も五輪もコロナ収束が大前提。しかし、日本はワクチン接種がなかなか進まない。
五輪

※「Our World in Data」5月13日より

東京五輪は開催一択?そしてコロナ後の世界

飯田:これもおかしな話で、日本はワクチンがあるのに、打つ人が足りない。自衛隊の医官を使うそうですが、一般の自衛官も動員すれば済む話じゃないですか。イギリスでは医療資格のないボランティアがオンラインの簡単な講習を受け、ワクチンを打っています。やろうと思えば、日本でもできるんです。 猫組長:薬物中毒者でも静脈注射が打てる。まして筋肉注射なんて難しいものじゃない(笑)。この非常事態にどうして超法規的措置が取れないのか。ワクチン接種の遅れで五輪反対の声は日に日に高まってきて、あれだけ強気だったIOCのバッハ会長までひよってきた。 飯田:経済効果からいえば、五輪は開催しようがしまいが同じです。五輪の経済効果って、ほとんどが準備段階で終わってしまう。すでに国は五輪関連で1兆7000億円ものカネを投じ、道路やスタジアムなどのインフラ整備を終えています。それにコロナ前は首都圏のホテル充足率は、常に9割を超えていて、インバウンド需要の追加効果も限定的でした。現代の五輪は儲からない。  僕は五輪賛成派ですが、それは先進国のノブレス・オブリージュみたいなものだから。何十年かに一度ぐらい世界のスポーツ文化に投げ銭しろ、という意味です(笑)。
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絶望の中だからこそ見える光明
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