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五輪汚職、逮捕の高橋容疑者と森喜朗の蜜月関係…「空白の48日」と突然増えた「1つの枠」

 高橋治之・東京五輪組織委元理事の逮捕を皮切りに火を噴いた五輪汚職。「復権」を懸けた戦いに挑む東京地検特捜部の関係者は「頂点」(テッペン)を狙っているという……。活動を再開したジャーナリスト・上杉隆氏が五輪汚職と神宮再開発の闇に光を当てた新連載「五輪汚職『森ルート』を暴く!」の第1回を転載する。

事情聴取した関係者は3ケタ。次なる特捜のターゲットは?

五輪汚職

現在、樹木伐採などで注目される神宮外苑再開発は、新国立競技場建設とも深い関係があるとされる。再開発地区の大半は明治神宮が地権者。オリンピックミュージアム、ラグビー場の地権者は、国立競技場と同じく文科省の独立行政法人であるJSCだ

「今、検察には多くの国民から激励の声が届いている。正直、ここまで反響が大きくなるとは思っていなかった。当然、若手も含めて特捜の士気は高まっている」  検察内部の人間からそんな内情を聞いたのは、仰向けに転がる蝉骸を足元に見かけるようになった夏の終わりのことだ。後に「五輪汚職」と呼ばれる一連の贈収賄事件のとば口となった、元東京五輪組織委員会理事・高橋治之容疑者の逮捕が報じられた直後だった。 「今回の事件は、特捜の『復権』を懸けた長い戦いになるだろう……」 彼は、手元のペーパーを繰りながらこうつぶやいた。  特捜の「復権」とは何か? 今世紀に入ってからというもの、検察は大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件(2010年)や小沢一郎氏(元民主党代表)の無罪判決で事実上の誤認捜査となった陸山会事件(2011年)など、敗北続きであったと言っていいだろう。  とくに故・安倍晋三氏が首相に返り咲いた10年前からは、森友、加計、桜の会と、世論の期待に応えられない日々が続いていた。そのため彼の言葉からは、今回の事件こそが、地に堕ちた特捜の名誉を真の意味で回復させる好機と捉えている様がうかがえたのだ。

特捜は「元総理」の肩書を持つ政治家を挙げるつもりなのではないか

 検察組織のなかでも汚職や巨額脱税、さらには談合、粉飾決算、インサイダー取引……といった大型事件を専門に扱い、政治家や経済界の大物を捜査対象とする地検の特別捜査部、いわゆる特捜は、社会の「巨悪」を討つことが使命と言われている。  その特捜が、今回の五輪汚職を足がかりに復権を懸けた戦いを本気で始めようとしているという。これまでの経緯を踏まえれば、彼らが見ているのは「バッジ」(政治家)以外にない。つまり、田中角栄を訴追したロッキード事件以来となる「元総理」の肩書を持つ政治家を挙げるつもりなのではないか……? 彼の態度から直感的にそう思った。 「バッジまで(事件が)延びる可能性があるんですね?」  問いかけを無視して彼はこう続けた。 「でも、あなたはもう書かないのでしょう……」  田中眞紀子元外相が「伏魔殿」と呼んだ外務省との確執を書いた『週刊文春』の記事で、雑誌ジャーナリズム賞の企画賞を獲ったのが2002年のことだ。その後、若い気鋭のジャーナリストとして『文藝春秋』や『週刊新潮』『週刊朝日』などで執筆し、いくつかのスクープを世に出したこともある。2012年にはオンラインの独立系メディア「NOBORDER」を立ち上げたが、この10年でいろいろなことがあったのも事実だ。ジャーナリストを名乗るのをやめ、東京都知事選に打って出たことや、国政政党の幹事長を引き受けたこともある。謂れのない醜聞をまき散らされたこともあった。  だが、そうした駆け引きに疲弊するうち、自らのルーツを振り返り、ジャーナリスト復帰を自然と考えるようになっていた。その矢先のことだ。何年も前に取材していたことが、目の前で再び動き出したのは。 「今、この事件が捲れてきたのは何かの縁かもしれない。検察が復権を目指すのは結構ですが、僕もジャーナリストとして書かなければいけないことを、もう一度書こうと思っているんです」  感傷的な気持ちから出た言葉ではない。1兆4238億円というかつてない巨額の金が投じられた一大国家プロジェクトを食い物にしようと、暗躍する巨悪に光を照射することは、ジャーナリストとして当然のことだからだ。 「現段階で高橋、AOKI、KADOKAWA、大広が(身柄を)取られている。頂点は森さんですか?」 「長くなるだろうね。だが、時効の縛りもある。簡単な捜査ではない。もちろん準備はしてきた。雰囲気は変わったよ。断言はできないが、内部でも期待はあるよね」
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今回逮捕された企業トップたちの「共通点」
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週刊SPA!10/25号(10/18発売)

表紙の人/ 宇垣美里

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