更新日:2021年09月17日 12:21
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pato「おっさんは二度死ぬ」復活!  キンタマの痛みに耐えながら第二章開始

角ばった勃起のままコンビニに移動

 あれほどあった痛みが和らいでいく。A4サイズの保冷剤を股間に挟み込んでキンタマを冷やす。やはりこれが正解なのだ。これなら歩くこともできるのでコンビニに買い物だっていける。そこで食料を購入するしかない。  しかし、大きな問題があった。保冷剤を股間から外すとすぐにキンタマが起動するのである。つまり、痛い。そうなると冷やしながら移動するしかない。つまり、A4サイズの保冷剤を股間に挟み込み、その上からスウェットをはき異様なスタイルでコンビニに行く必要があるのだ。完全に角ばった勃起をした人だ。こんな情けない姿で入店しようものなら即通報されるかもしれない。西部劇のバーだったら即射殺されている。  それでも行くしかないので、角ばった勃起のままコンビニへと移動し、勃起なんてしてないよと主張するために涼しい顔でからあげくんを購入してきた。レジでは、体温によって温められた保冷剤が結露し、じっとりと灰色のスウェットの股間周辺を濡らし始め、そこだけ色濃く変色し始めていた。さらにいつ通報されてもおかしくない状態となった。完全に間一髪だがギリギリセーフといったところか。  なんとか食料は入手したが、いつまでも保冷剤を股間に挟み込んで生活するわけにもいかない。そうなると、病院に行く必要があるだろう。泌尿器科だ。もう夜も遅いので明日の朝いちばんで泌尿器科に駆け込む必要がある。それまでなんとかもってくれよ、俺のキンタマ、祈るようにそう呟いて就寝となった。  朝が来た。  一睡もできなかった。キンタマが痛くて一睡もできない、そんなことが僕の人生のなかで訪れるとは思わなかった。僕が子供のころにおっさんとなった僕がタイムマシンでやってきて「キミはね、おじさんになったらキンタマが痛くて一睡もできなくなるんだよ」と言われたら泣く、ワンワン泣く。それどころか自害も辞さない。それくらいの出来事だ。  早く治療してもらわなくてはならない。強く決意した。

キンタマを丁寧語で表現

 病院の場合、コンビニとは事情が異なり、けっこう真面目で整然とした雰囲気があるので、通報強度が低そうだ。つまりすぐ通報されそうなので、角ばった勃起ではいかず、剥き身で行くことにした。といってもパンツとズボンははいている。普段なら30分くらいの徒歩でつく距離なのに倍以上の時間がかかった。歩くたびに振動がキンタマに響き、身悶える痛みと戦うからだ。  泌尿器科に到着したときには完全に消耗しきっており、疲労困憊、戦地から帰ってきた英雄みたいな状態になっていた。  「今日はどうされましたか?」  窓口のお姉さんがめちゃくちゃかわいかった。単にかわいいだけでなく、ちょっと真面目そうな感じで、好きなタイプだった。  「キンタマが腫れまして」  そんなこと言えるわけがない。キンタマなんて下品な言葉、言えるはずもない。もっと丁寧な言葉で言わなければならない。睾丸が腫れたとか言えばよかったのだろうけど、もう痛みで頭が回らなくなっており、キンタマを丁寧に言わねばならないと気ばかりが焦っていた。  「おキンタマが腫れまして」  下品どころか圧倒的にふざけている人みたいになってしまった。
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キンタマの腫れ具合を正確に答えようとして……
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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