山奥の牢獄に、似つかわしくないエロビデオ一本。その正体は――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第78話>
―[おっさんは二度死ぬ]―
昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート!
【第78話】令和のキャッツ・アイ
ネットニュースを見ていたら「令和のキャッツ・アイ」というパワフルなワードが躍っていた。
なんでもホストクラブで働く男性を狙って自宅に忍び込み、現金などを盗んでいた女性二人組が逮捕されたらしい。その被害額は3000万円とも言われており、逮捕された女性は盗んだ金をまたホストにつぎ込むというちょっとした永久機関みたいなことをしていたようだ。
防犯カメラに女性二人が映っていたことから捜査員たちは「令和のキャッツ・アイ」と呼んでその行方を追っていたらしい。令和のキャッツ・アイである。
キャッツ・アイとは北条司先生が執筆する漫画であり、1980年代前半に週刊少年ジャンプに連載され、あらゆるメディアにも展開された名作だ。美人三姉妹が巷を騒がす怪盗「キャッツ・アイ」として美術品を狙うストーリーだ。この作品の名称を流用して「令和のキャッツ・アイ」と呼んでいたようだ。
本当にそう呼んでいたのかは別として、もし本当にそう呼んでいたらなかなかセンス悪い。別に本物のキャッツ・アイのようにレオタード風の衣装を着て犯行に及んでいたわけでもないのに、女性の泥棒というだけでキャッツ・アイ、それを令和になっても続けていること自体が、なんというか色々ときつい。
「令和のキャッツ・アイ」
その言葉に時代錯誤を感じつつ、それとはやや無関係なあることを思い出していた。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri)
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『pato「おっさんは二度死ぬ」』 “全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"―― |
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