更新日:2021年09月17日 12:21
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pato「おっさんは二度死ぬ」復活!  キンタマの痛みに耐えながら第二章開始

キンタマの腫れ具合を正確に答えようとして……

 待合室で待つように言われるのだけど、椅子に座ってしまうと完全に痛みで死んでしまうので、立って待つしかなかった。病院は混みあっていて、けっこう待つことになった。1時間くらいは待っただろうか、キンタマの痛みで気が遠くなり、いよいよ自我を乗っ取られる! となったとき、診察室へと呼ばれた。  キンタマに振動が伝わらないよう、ロボットみたいな歩き方で診察室へと入る。  医師はなんだか怖そうな人だった。なんとなく、キンタマが腫れたことに対して説教されそうな圧を感じる人だった。あまりにも怖そうな人なので、症状を正確に伝えなければならない、そんな思いが芽生えていた。適当なことを言おうものなら怒られ、キンタマを治療してもらえないと思ったのだ。  「睾丸が腫れて、痛くて、もう歩けない、一睡もできない状態でして」  なぜか、きちんと「睾丸」と言えた。医師はこちらを一瞥するでもなく、カルテに何か書き込みながら質問してきた。  「どれくらい腫れましたか?」  きた! ここは正確に答えなければならない。とにかく正確に答えなければならないのだ。  皆さんはキンタマが腫れた場合、その腫れのスケールをどこに取るだろうか。つまり、何をもって〇〇倍に腫れた、というのだろうか。何を言っているのか分からないと思うけど、決して、キンタマに自我を乗っ取られたわけではないので落ち着いて聞いてほしい。

腫れた面積は球体で求める必要がある

 まず、左のキンタマが腫れた場合、定規をもってきてその大きさを測り、右のキンタマと長さを比較するはずだ。分かりやすくその大きさが2倍だったとしよう。 図1 この場合、左のキンタマが2倍に腫れた、となるはずだ。けれども、はたしてそうだろうか。落ち着いて考えてほしい、2倍になっているのは直径だけである。では、キンタマの面積としてはどうだろうか。 図2 円の面積の公式は半径×半径×円周率である。つまり、長さが2倍となると、面積は2の2乗倍、つまり4倍となる。大きさでどれだけ腫れたのか表現すれば2倍、面積で表現すればキンタマはじつに4倍になっている。2倍と4倍では深刻度が全く違う。  さらに、皆さんのキンタマを触ってみて欲しい。そう、そこそこ、それ。そう! エグザクトリィ! キンタマは球形なのだ! つまりキンタマの腫れは球体で考える必要がある。  球の体積の公式は4/3×円周率×半径×半径×半径、つまり大きさの3乗できいてくる。大きさが2倍になるということは2の3乗、つまりキンタマは8倍になっているのである! 8倍である! 8倍だ! キンタマが8倍に腫れた! そう言われるといつ死んでもおかしくない状態に聞こえる。
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医師からの力強い蔑みの目
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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