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有名建築家のビル、公共施設「使い勝手は最悪」。アート先行の問題点とは

ゴーストタウンになった有名建築家の商業ビル

木屋町タイムズビル

日本が誇る建築家、安藤忠雄氏が手がけた木屋町にあるタイムズビル。コロナの影響もあり、現在はテナントが全て撤退し、空き家状態となっていることが地元でも話題に

 2016年までレギュラー放送されていた『大改造!!劇的ビフォーアフター』(朝日テレビ系)を観たことがある人ならば、一度はそう考えたはず。自宅をリフォームするドキュメンタリーの中で「匠」と呼ばれる建築家が、今後のメンテナンスを考えない設備やモニュメントのようなものを備え付ける様子は放送のたびに話題になっていた。  だが、現代社会では家をリフォームしなくても日常の中で誰もが使い勝手を考えない建築家の身勝手に迷惑をかけられるものだ。最近、コロナ禍で商業施設のテナントが撤退する中で図らずも注目を集めてしまったのが、京都市の繁華街・木屋町にあるタイムズビルだ。  4月にフランスのレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールを受賞したことも報じられた建築家・安藤忠雄氏の設計した商業ビルの代表格といわれるコンクリートの壁面が目立つ独特の外見の建物だ。かつてはハイブランドがこぞって入居していたが、近年は半分近くが空室に。そして、コロナ禍の影響もあってか残っていたテナントも撤退し、繁華街の中のゴーストタウンとなっている。以前から、デザイン性の高さの一方で入りづらさが指摘されていた建物だが、コロナ禍でついに終焉を迎えたようだ。

東大生から不評を買う建物

 数々の栄典を得て現代建築の第一人者としての地位を確固たるものにしている安藤氏だが、芸術としての評価の一方で使い勝手の悪さを指摘する声は尽きない。もっともよく聞かれる批判は、コンクリートむき出しの外観と、ガラス貼りの多用。そして、雨どいのない屋根である。東京都文京区にある安藤建築の代表作のひとつである東京大学情報学環・福武ホールは、これらの問題点をすべて兼ね備えた建物とも言われている。
福武ホール

雨が降ると滝のように雨水が流れ落ちてくると言われる福武ホール。東大生にも不評とか

「平たい屋根なので、ちょっと強い雨が降ると雨が滝のように地面に向かって流れ落ちてきます。おまけに屋根の下には地下階へ繋がる露天の外階段があるんです。滑りやすくて危ないし陽が当たらないものだから、年中ジメジメしてます。そのせいか出来てから10年ちょっとなのに(註:2008年竣工)、もう劣化して補修してる部分がありますよ」(卒業生)  この福武ホール、キャンパス内の道路に面した側はすべてガラス貼りになっている。なのに建物と道路の間にはコンクリートの壁が建てられて、道路側からの視界を塞いでいる。見せたいのか見せたくないのか、意図を図りかねるデザインだ。
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アートの島では島民から不満の声も
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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