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おっさんが同じ話を何度もする呪い。青春時代の記憶は都合よく改ざんされて…

ダウンロードロゴ:ヒールちゃん(@heelhell) 【「おっさんは二度死ぬ」 2nd Season】  第二回:–プロフィール帳という呪い–

おっさんの話は円環(ループ)する

 それはたぶん、呪いのようなものなんだろう。  おっさんはいつも同じ話をする。とにかく繰り返し同じ話をする。どうやら、おっさん自身もある程度は俺、同じ話をしているかも、みたいに思う部分があるらしく「この話、したっけ」と前置きをするのだけど、それをした上で、やはり同じ話をする。  それは、単に忘れっぽいだとか、話のネタがそれしかないだとか、そういった要素ももちろんあるのだろうけど、もっと根っこの部分、深層心理のところまで掘り下げていくと、それはもう呪いなんだと思う。  つまり、何度も口にしてしまうほど、その「同じ話」に呪われているということだ。それはもう呪縛と言っても過言ではなく、同じ話をグルグル、グルグル、おっさんを円環に閉じ込める呪いと化すのだ。

しかも毎回、微妙に内容が変わる

 本田さんもそんな呪いに囚われ、円環の中にその身を沈み込めた一人だった。  「でさあ、プロフィール帳ってあったじゃん」  本田さんはかったるそうな表情でそう言った。彼は駅前のパチンコ屋で知り合ったおっさんで、僕と同年代でちょっと年上ということもあり、なにかと話が合う人物だった。そんな彼が酒を飲み、盛り上がってくると必ずする話がある。  それが「プロフィール帳」のエピソードだ。 「あれ、この話、したっけ?」 「いえ、まだですね」  まだ何も話していない状態でそう質問することに大きな意味はない。単にこれからプロフィール帳の話をするぞ、という合図に過ぎないのだ。もう12回は聞いた、と思いつつも指摘はしない。なぜならこの話をするとき、その回数ごとに微妙に話の内容が変わっているのだ。それが楽しみで何度も同じ話を聞いている。
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当時の女子中学生の間で大流行した「プロフィール帳」
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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