コロナ禍のしゃぼん玉は危険な飛沫玉
―― “憑依芸”として演技力を評価されることが多いですが、加えてその“あるある”を見つける観察眼も素晴らしいと思います。ここ最近で、今後なにかネタにしたいと感じた出来事はありますか?
あります、あります。いくらでもあるな。例えばやけど…コロナ禍で除菌スプレーってよく見るじゃないですか。あれをもうちょっとイケてる感じに使う方法がないのかなと思っていて。
――どういうことですか…?
センサーに手をかざすとスプレーが手に出てきますよね。例えばバスケをやってる人なら、高い位置に除菌スプレーを置いて、エアジョーダンみたいに空中でスプレーを浴びたらめちゃくちゃカッコいいんんじゃないかなと思って。そしたら誰かがロゴを作って…とか。
――普段からそんなことを考えているんですね(笑)。
そんなことばっかり考えてますよ。コロナをきっかけに考えたことは多いですね。最近、歌にしようと思ってるのが、しゃぼん玉。
あれ、よく考えたら純度100%の飛沫玉じゃないですか。息を閉じ込めて空中を舞ってるから、割れると飛沫が広がる。しゃぼん玉を飛沫玉に替え歌しようかなと思ってるんですけど、作者から怒られないかな。
いろいろ考えてることをコントに入れたり、歌にしたり、短いネタにしたり。混ぜ合わせて作ることもありますね。
リモート会議って画面に奇抜なヤツがひとりいると目立つじゃないですか。これがもし会社と会社のプレゼン大会だったら、奇抜なヤツをひとり入れておけば、相手に舐められないんじゃないかって思ったことがあって。
そこで「レンタルなんもしない人」という名前をパロディさせてもらって、なにもせず画面にいるだけでコンペの勝率が上がる「レンタルなんもしないクリエイター」っていうネタをやりました。これは、日々感じたことを混ぜ合わせたパターンですね。
ロバート・秋山のネタ作りは「やってて楽しいのがいちばん大事」
Netflixにて全世界独占配信中『クリエイターズ・ファイル GOLD』
――「クリエイターズ・ファイル」やコント、短いネタなど、様々な種類のアウトプットをしているなかで、思いついたアイデアをどう振り分けているのでしょうか?
基本的にロバートのコントに入りそうなら、まずそこに持っていきます。料理するのが難しいか、ひとりでもできるかなって思ったのは「クリエイターズ・ファイル」に使って。
成仏しようがない変なヤツもあるけど、コロナ禍で大勢のトーク番組が減った分、短いネタをやれる機会が増えたので、そういうところで使ってます。そこまで出しどころに困らず、意外とやりたいことができてる感覚はありますね。
――面白そう、やってみたいという気持ちでネタを作る際に、「自分のやりたいこと=ウケる」とは限らないと思うのですが、やる前からどのくらいウケるのかは、ある程度わかるんですか?
いや、それはいつまで経ってもわかんないですね。
でもこの十数年、ウケるかをまったく気にしないライブを2カ月に1回続けていて。ただただ実験的なネタをやる場として、とりあえず遊んでみるんですよ。そこでやってみて、半分くらいのお客さんに受けたら「ちょっと見えたかな、広げてみようかな」と思います。
そこでまったくウケなかったら、これはないかなって諦めもつきます。昔から馬場(裕之)と遊んでたときのノリみたいな意味がわかんないやつは、ここで出したりしますね。
――実験的なライブではなく、テレビや賞レースなど幅広い層を笑わせようと、表現を変えることはありますか?
『クリエイターズ・ファイル GOLD』7つ星ホテルのコンシェルジュ・折尾豊 (ホテルマン)
今はそれよりも、やりたいことを優先してますね。ここ1年の話でいうと、ニコニコ動画とか生配信で、テロップが右から左に流れていくじゃないですか。「www」とか。あれを見てたら、人力でやってみたくてしかたなくなっちゃったんです。
舞台上で、(山本)博がひとりで話してるところを、おれと馬場が「うるせえ」「オチがねえな」とか思ったことをホワイトボードに書いて、上手から下手へ移動して、セットの裏を通って、また上手から下手へ…って遊びをしてたら、完全に楽しくなっちゃって。
めちゃくちゃウケたわけじゃなかったけど、やっぱりこの楽しいって気持ちには勝てないから、ネタに仕上げてテレビまで持っていきましたね。
――では、披露する場によってネタや表現を変えることはないと。
変えてないですね。うちらのネタってストーリー性がないので、ひとつ遊びがあればそれだけで無理やり行っちゃえ!って感じでやってます。
1回キングオブコントで優勝できたので、正直、もう好きにやっていいだろうというか、どう滑ろうが文句ねえだろって気持ちはありますね。うん。優勝してからはかなり気持ちが変わりましたね。
――キングオブコントで優勝するまでは、少しは大衆向けに寄せる意識もあったんですか?
うちらのネタは中身がよくわかんないのが多いから、入り口だけちゃんとするっていうのは考えてましたね。
「邪念ゼロ研究所」なんかも、無になったら電気を消すって意味分かんない。ネタじゃないですもんね。でも無理くり「コント」っていう枠組みに入れることで、お客さんに見てもらいやすくするために、その入口として…一応チラシを読んで説明するってことにして。
でも結局は、やってて面白いなって思うのが大事ですかね。練習してるときにケタケタ笑っちゃうやつ。ネタ合わせしてて、思わず吹いちゃう率が高いネタが面白いと思ってます。
ロバートの秋山竜次が様々なクリエイターに扮する
『クリエイターズ・ファイル GOLD』は、Netflixにて全世界独占配信中。
取材・文/森ユースケ
撮影/石塚元