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電車の中で女子高生と二人っきり…おっさんが取るべき行動は

やはりおっさんは何もしないほうが良いのだ

 結局ね、不自然なのは怖いんですよ。つまり、自然と音を立てて起こさなくてはならない。それにはどうしたらいいか。これはもう、意図せずスマホから音が出る、ですよ。  高校生とか大学生なんかの間ではですね、授業中や講義中に隠れてスマホゲームしたろと、机の下でこっそり起動したら大音量で「ブシモ!」と流れたとかですね、そういうのがあるんですよ。これですよ。意図せずに大音量が流れちゃった、これで行くしかない。  「サイゲームス。 ウマ娘プリティダービー、テーレテレッテー」  流してみたけど、ぜんぜん大音量じゃないのな。静寂の中ならかなり目立つと思うんだけど、減速する電車の中では、その機械音にかき消されてしまう。もう打つ手がない。  そうこうしていると、電車はゆっくりと泉佐野駅のホームに吸い込まれていった。もうホームの看板の文字が読めるくらいまで減速している。女子高生が乗り換えるはずと考えられる駅だが、彼女は起きる様子がない。ああ、彼女は寝過ごしてしまう。絶望してしまう。けれども、このおっさんにできることなどない。僕たちは彼女たちに何もしてあげられないのだ。

おっさんは本当に何もしなくて良かったのだ

 その瞬間だった。  ブーブー!  眠りこける彼女が手にしたスマホが振動を始めた。スマホの振動音って騒がしい車内であってもけっこう聞こえるものだ。彼女はすぐに目を覚まし、どうやら着信を告げる振動だったようで、すぐに電話に出た。  「あ、うん、うん、ありがと、マジ寝てた。乗り換える駅だわ」  そんな会話をしていた。やはり彼女は泉佐野駅で乗り換えだったようだし、おそらく寝過ごした前科があるのだろう、それを見越して誰かが電話をかけてきてくれたのだ。  泉佐野駅に到着し、ドアが開く。女子高生はいそいそと降りて行った。  「ありがと、うん、大好きだよ、また乗るから。うん、帰ったら通話するね」  そう通話しながら降りて行った。どうやら彼氏が起こしてくれたみたいだ。おっさんの出る幕なんて最初からなかった。  関空までの車内、乗客は僕だけだった。関空にもほとんど人の姿はなく、ほとんどの店は休業か撤退といった状況だった。この光景を絶望と捉える人もいるだろう。僕だってこの光景は悲しい。けれども、泉佐野駅でみたあの光景は、あの女子高生のような若い世代、様々なものを奪われた世代が、それでもたくましく青春しているようでなんだか嬉しかったのだ。  おっさんが若い世代にしてあげられることなんてほとんどない。しないほうが最良である場面がほとんどだ。たぶんそれでいいのだろうと思う。 「とりあえず飛行機は寝過ごして降りられないことないですからな」  かろうじて営業してていた空港のコンビニで、ストロングゼロを購入し、誰もいない空港で一気に飲み干した。おっさんにできることなど、これくらいなのである。 ロゴ/ヒールちゃん(@heelhell) イラスト/井上菜摘(@natsumi19900325テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。ブログ「多目的トイレ」、twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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