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高級風俗へ向かう車中、隣には招かざる客が…「この男、化け物ですよ」

【「おっさんは二度死ぬ」2nd Season 第4回 -冷たい方程式-】

何が正解だったのか?

「冷たい方程式」(1954年:トム・ゴドウィン著)という古典SFがある。  惑星ウォードンを調査していた一団に致死性の疫病が蔓延する。その血清を届けるために小型宇宙船に乗り込んだパイロットは、発進後に船内に隠れていた密航者を発見する。その密航者は18歳の少女であり、ウォードンで調査にあたる兄に会うために宇宙船に潜り込んでいた。  少女は、たとえ密航が見つかったとしても罰金程度で済むものだと思っており、それより兄に会いたい気持ちが勝っていた。けれども、規定によると、密航者は発見次第に、すぐに船外、つまり宇宙空間に放り出すことになっていた。もちろん、そこに待つのは「死」だ。  小型宇宙船には燃料も酸素も最小限度しか積み込まれておらず、一人増えたことによりウォードンまで安全に到達できなくなるからだ。そうなると、パイロットどころか血清を待つ調査員の命すらも脅かされてしまう。  なんとか船外への放棄を遅らせようと策をめぐらすパイロット。そんな極限の状況においてやがて彼女は決断する。果たして、彼女の運命は。そしてパイロットと調査員の運命は。  といったものだ。果たしてパイロットはどうするべきだったのか。少女はどうするべきだったのか。有名なトロッコ問題などもそうであるように、こういった正解のない問題は大きな物議を醸す。この作品ももちろん大きな議論を呼び、これに対するオマージュやパロディも多数発生した。それらの変種の作品群を「方程式もの」と呼ぶようになったほどだ。  僕もこの問題についてはしばし考えることがある。何が正解だったのか。

風俗マニア、徳重さんに訪れた幸運

「それはまさに冷たい方程式ですねえ」  ポツリとそう口にした。  八王子の町はずれにある喫茶店。ドアが開くと表通りの喧騒に混じって自動車の排気ガスが入り込み、ドアにつけられた煤けた鈴がカラコロと元気に鳴る、そんな店だった。 「どうするべきだったのだろうか」  競馬場で知り合った徳重さんはかなりの風俗マニアであった。同じ風俗マニアでも「陽」のマニアと「陰」のマニアがある。徳重さんは明らかに「陽」のマニアであり、陽気に風俗を楽しんでいた向きがあった。  徳重さんには風俗友達が何人かおり、全国各地の風俗を訪れる「旅打ち」が何よりも楽しいと豪語していた。まさしく「陽」だ。ちょうど僕たちサウナマニアが日本全国の名サウナを求めて旅するように、あっちにいい風俗があると聞けば旅費もいとわない、移動時間も気にしない。とにかくみんなで訪れる。そんな楽しみ方だったようだ。  ある時、徳重さんにとんでもない幸運が訪れた。ある地方に存在する伝説的な名風俗店、その予約が取れてしまったのだ。この名店、料金設定の高さ、予約の困難さもさることながら、まずそのステージに立つことが難しい。基本的には新規の客を相手にしておらず、会員になるには常連客の紹介が必要となり、紹介があったとしても厳しい審査が待ち受けている。老舗の料亭のような厳格なシステムがそこにあった。  そういった名店も、客がいない閑散期や、常連客がある程度は減少したところで新規客の募集を始めることがある。大々的に募集するのではなく、厳かに、静かに、ひっそりと募集される。だからほとんどの人は気が付かない。徳重さんは幸運にもこの新規募集を掘り当て、とりあえず一度だけ利用する権利を得たのだ。一度の利用を経たのちに、審査を受けて晴れて会員となるわけである。こんな格式の高い風俗店が存在するとは驚きだ。
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