更新日:2021年09月23日 16:37
エンタメ

ネットで出会った霊感系美女におかした僕の失敗「これワシの…」

その時、彼女の様子が豹変し……

 その瞬間だった。彼女の様子が一変した。 「しっ! 何か聞こえる!」  そう言って耳を澄ます仕草をみせるのだけど、やはり僕には聞こえない。遠くの方でゴトンゴトンと電車が動く音が聞こえるだけだった。 「なにもきえこえな……」 「しっ! ほらっ! 耳を澄まして!」  彼女のあまりの迫力に、再度、目を閉じて耳を澄ませてみる。 「うぅ……うぅ……」  確かに聞こえた! 女性の声だ! 苦しそうな呻き声が聞こえる。本当に、何かが起こった。なんか一気に周囲の気温が下がり、寒くなったように思えた。 「聞こえます!」 「苦しそう」 「なにか訴えたいのかも」 「きっと何かを伝えたいんでしょうね」  そんな会話をしながら周囲を捜索し、さらに耳を澄ます。 「うぅ……うぅ……」  女性の声はさらにトーンが大きく、より苦しそうなものへと変わっていく。なにか伝えたいのか。恨みでもあるのか。違った種類の汗がどんどんと噴き出してきた。

技術の発展は時に悲劇をもたらす

 そして、事件が起きた。 「うぅ……うぅ……」  謎の呻き声が続く。 「うぅ……うぅ……」  謎の呻き声が続く。 「うぅ……うぅ……今日は面接だけじゃないんですか?」  これワシのエロ動画だ。  ポケットの中でスマホがエロ動画を再生しているだけだった。とんでもないことだった。さきほど、検索をかけようとしてスマホを開いたときに、そのまま直前まで見ていたエロ動画が再生されたんだと思う。そのままポケットにしまいこんだので、ずっとポケットの中で再生されていた。 「すいません、僕のエロ動画でした」  正直にそういった時の彼女の顔、僕は忘れることないと思う。  意図せずエロ動画が再生されてしまう。これは情報化社会が発達し、様々な事象が便利になるにつれて増えてきた悲劇だ。例えば、テレビもスマホも無線LANに繋がった状況でエロ動画を鑑賞しているとエロ動画の左上に「リビングのテレビで再生する」みたいな核爆弾のスイッチのごときボタンが出現することがある。これがどれだけの悲劇を生みだし、リビングを地獄に叩き落してきたのか想像するだけで冷や汗がドボドボと流れ出てくる。  技術の発展と悲劇は常に表裏一体なのだ。  ちなみに件の彼女、後日、彼女のアカウントにあったブログを見に行ったら「あの例の何かを感じる場所、相談した人と一緒に見に行ったらなぜかエロ動画を再生されてしまい、その音声を二人で霊の声だと勘違いして震えていました」といった趣旨の報告しており、それに取り巻きから「草」「草」と2名からコメントがついていた。 ロゴ:ヒールちゃん イラスト:井上菜摘
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

1
2
3
4
おすすめ記事