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「ケンダマンの気持ち考えたことあるのか」完璧超人を巡る老婆と少年のナゾ問答

【おっさんは二度死ぬ 2ndseason】

第6話 -出禁のきもち-

 友人が常連として通う居酒屋がかなり厳しいらしい。  もちろんこのご時世、経営が厳しいということもあるのだけど、それ以上に厳しいのが店のルールだ。どうやら店長がかなり厳しい人のようで、簡単なことで「出入り禁止」いわゆる「出禁」になるらしいのだ。  最初のころは、それこそ酒に酔って暴れるだとか、店のものを壊すとか、他の女性客にナンパまがいのことをするだとか、そういった迷惑行為を受けて真っ当に出禁処分をしていたらしいのだけど、最近はそれが先鋭化しすぎて訳の分からない理由で出禁になるようなのだ。  トイレに行ったときにテーブルに置いたままのスマホが狂ったようにアラーム音を鳴らしたので、うるさいので出禁という理不尽な出禁を皮切りに、最終的には最初のオーダーが脂っこいものだったので不健康なので出禁、という訳の分からない状態に陥ったそうだ。赤い服を着てきたから出禁、を言い渡された常連が出た瞬間に、これはただ事じゃないとなったらしい。  そんな店、出禁になってもいいじゃん、と思うのだけど、そういうわけにもいかないらしく、友人はそれでもその店に通いたいようなのだ。

ふと、小学生の頃の苦い思い出が蘇った

 それにしても、その話が本当ならばなかなか理不尽な出禁理由だ。ある程度は独自のルールが必要で、運営上は仕方がないとはいえ、あまりに度が過ぎるのも困ったものだ。  理不尽な出禁といえばどうしても思い出すことがある。  小学校の頃、僕は校区のギリギリに住んでいたので、路地を1本奥に入ると、違う小学校の校区が広がっていた。小学生にとって校区とは絶対的なテリトリーであり、違う校区はまさしく別世界、あまり足を踏み入れることはなかった。  ただ、学年があがってくると次第にその別世界を楽しむようになってくる。そこには別世界の路地があって、別世界の公園があって、顔も見たことがない別世界の小学生が遊んでいるのだ。ただ校区が違うというだけで、そこには何ら変わらない小学生の日常が隣り合わせに存在している。それはなんだか奇妙で面白かった。  そこで、二人の小学生と仲良くなった。同じ学年だ。ひとりはどこか良いところのお坊ちゃんらしく、パリッとしたシャツを着ていた。もう一人は小太りな感じで皆から「チャーハン」という名前で呼ばれていた。  「バアさんの店に行こうぜ!」  パリシャツの提案により、バアさんの店と呼ばれる駄菓子屋に行くことになった。どうやらこちら側の校区にも僕らの校区と同じように子供たちがお小遣いを握りしめて集まる駄菓子屋があるようだった。みんな猛烈な勢いで路地を駆け抜け、そのバアさんの店に向かった。
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チャーハンだけが入れない、バアさんの店
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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