更新日:2021年08月31日 12:03
ライフ

キャンプブームの正体は、三密回避よりも中年男たちの“物欲リバイバル”

 あらゆる年代の人がいる職場はまさに“世代のルツボ”。特に社会に出て間もない人にとって、過重労働が社会問題になっている時代にあって嬉々として“徹夜仕事”をしたり、なんでも電子化、レンタルできる世の中で“モノにこだわる”40代以上の世代は奇異に映るかもしれない。  社会の文脈的に“ロスト”されてきた世代は、日々どんなことを想い、令和を楽しもうとしているのか。貧乏クジ世代と揶揄されつつも、上の世代の生態をつぶさに観察し、折衝を繰り返してきたロスジェネ世代の筆者ふたりが解説していく。

ロスジェネ世代はアウトドアに一過言あり。プロキャンパー続出のワケ

キャンプ「キャンプ、いまブームみたいですね。インドア派だった同僚が、知らぬ間にキャンパーになってて、今年に入って5回も家族でキャンプに行ったらしく……。車も今春、SUV車に乗り換えて。実際のところ、キャンプってホントに楽しいの? 虫に襲われそうだし、寝心地悪そうだし、夕食も焼きそばが関の山でしょ? 最初で最後のキャンプは小学生の頃に行った林間学校だったかなぁ。息子の夏の思い出に行ってみたい気持ちもゼロじゃないけど、何をどうすればいいのか……」(43歳・金融)  密閉・密集・密接しない「三密回避」のレジャーとして、長引くコロナ禍、キャンプ人気に拍車がかかりました。ソロキャン、グランピング、デイキャン、家キャン、女子キャン、ファミキャン……筆者のまわりでもキャンプに開眼した人は多く、この連載の担当編集者もそんなひとりです。聞けば現在、ブームは過熱の一途をたどり、3ヵ月前予約は当たり前で、予約開始の当日の朝になるとキャンプ場の電話はパンク寸前。1時間かけ続け、やっと繋がることもキャンパーにとっては常態のようです。

スノーピークの業績は過去最高

 調べてみると、アウトドア用品の老舗・スノーピークの時価総額は1000億円台に到達。年初に1826円だった株価が8月16日の終値で5369円の上場来最高値を更新。キャンプ人気を追い風に、業績好調が続いています。  明るい業界のニュースはさておき、いま、キャンプブームを牽引しているのは誰なのか。開口一番、ロスジェネ世代と答え、首を傾げる人は少ないはずです。”ファミキャン”という言葉が市民権を得たことからも分かるように、密にならず楽しめるキャンプは、コロナ禍にあって子供をもつ親にとって、財布にも優しく、自分も家族も楽しめるお手軽なアクティビティと言えそうです。  20代、30代の頃に比べると自分が使えるお金は減ったものの、家族皆で使うという大義名分のもと、テントや椅子、テーブルなどのギア選びを楽しめ、そのラインナップもスノーピークやモンベル、ノースフェイスなどのアウトドアの老舗から、ひとクセあるガレージブランド、セレクトショップのオリジナルまで幅広い。アウトドアファッション誌『GO OUT』を代表格に、多くのメンズ誌がアウトドア特集をしてるという事実からも、読者層のロスジェネ世代はストーリーのあるモノ選びに(青春時代と変わらず)熱心で、その気持ちを追い風にしながらキャンプ熱を高めている気がします。
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キャンプへの初期衝動は90年代に遡る
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数々の雑誌を渡り歩き、幅広く文筆業に携わるライター・紺谷宏之(discot)と、企業の広告を中心にクリエイティブディレクターとして活動する森川俊(SERIFF)による不惑のライティングユニット。 森川俊 クリエイティブディレクター/プロデューサー、クリエイティブオフィス・SERIFFの共同CEO/ファウンダー。ブランディング、戦略、広告からPRまで、コミュニケーションにまつわるあれこれを生業とする。日々の活動は、seriff.co.jpや、@SERIFF_officialにて。 紺谷宏之 編集者/ライター/多摩ボーイ、クリエイティブファーム・株式会社discot 代表。商業誌を中心に編集・ライターとして活動する傍ら、近年は広告制作にも企画から携わる。今春、&Childrenに特化したクリエイティブラボ・C-labを創設。日々の活動はFacebookにて。

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