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菅内閣の実績は安倍内閣の8年間を上回る。なぜ嫌われた?/倉山満

菅内閣の実績は8年間の安倍晋三内閣を上回る

 外交は、軍事抜きで可能な限界まで奮闘した。アメリカの対中対峙戦略に歩調を合わせていたし、防衛費のGDP 1%枠の再突破にも道筋をつけた。本気の外交力とは、どこまで防衛費をかけて軍事力を強化するかに裏付けられる。本来ならば2%が文明国水準なのだから、周辺諸国の脅威に対抗するには、次の総理は本気で予算編成をしなければならない。  軍事の裏付けとなる経済でも、菅内閣は日銀人事に踏み込んだ。野口旭委員を送り込むことにより、日銀政策決定会合9人中4人をリフレ派(景気回復派)が占めた。安倍内閣でも3人が最大だったが。これで時の総理大臣と黒田東彦総裁が決心すれば、大規模な景気回復策を打ち出すのも可能な体制となった。コロナ禍では、政府の財政出動と日銀の金融緩和で景気を支えるしかない。しかし、リーマンショックの時の白川方明総裁のように「デフレ誘導政策」を行えば、明日から日本は今以上の地獄だ。菅内閣では、なんとか持ちこたえていた。

菅首相が嫌われる理由の第一は、規制改革に本気で取り組んだこと

 皇室、外交、経済と、菅内閣は堅実に実績を積んでいたし、むしろ実績は8年間の安倍晋三内閣を上回る。安倍首相は旧皇族の皇籍取得を「GHQが決めたことを覆す気はない」と国会で言い放ったし、防衛費は常にGDP 0.95%を堅持していた。経済成長率を勘案すれば、民主党内閣よりも防衛努力をしていないことになる。  では、なぜ菅首相は、四面楚歌の嫌われ方をしているのか。二つ理由がある。  一つは、規制改革を打ち出し、本気で取り組んだことだ。自民党は、「規制で食っている政党」なのである。ここに切り込めば、どこにも味方がいなくなるのは、必定だ。規制とは、国民に対する政府の命令だ。その一つ一つに予算が伴う。「新しい規制を創設することで特定の業者を保護し、補助金を財務省から引っ張り出す」のが、自民党の優秀な議員の条件だ。規制改革など、自民党の全否定だ。  それでも選挙に勝てる総理大臣ならば我慢するが、菅首相の支持率は最初の「ご祝儀」を頂点に、下がり続けた。
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菅首相が嫌われる理由の第二は……
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