菅総理はサラリーマン的に“人事”で脅す。笑うしかない裏側に迫る<前編>
2020年9月に安倍晋三元首相の体調不良による内閣総理大臣辞任をきっかけに発足した菅義偉首相内閣。
前内閣官房長官時代から記者からの質問にきちんと答えないなど、誠実さを欠くとも言うべき国民への説明不足は批判の対象になっていましたが、内閣総理大臣に就任した後は、はっきりしたメッセージが国民に伝わっていないこともあり、政治の舵取りをきちんとできていないのではないかとの声が上がっています。
そんな中、菅義偉首相の政治手法に迫ったドキュメンタリー『パンケーキを毒見する』が、7月30日から新宿ピカデリー他全国で公開されます。「パンケーキ」は菅首相の大好物で、内閣発足当時は菅さんと言えば「パンケーキ」を連想した人も多いはず。しかし、今、菅内閣の舵取りはパンケーキのようにふわふわで、中身がないのでは……。
今回はそんな思いを込めて同作を監督した内山雄人さんに、制作の経緯などについて話を聞きました。
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――映画の製作経緯についてお聞かせください。
内山雄人監督(以下、内山):この映画は河村(光庸)プロデューサーが、菅内閣が誕生した時から考えていた企画です。菅首相は安倍元総理大臣の官房長官というイメージが強く、安倍元首相の路線を継承するというイメージはあっても「他になり手がいないから総理大臣になった」「どういう人なのかよくわからない」と思っている人が当時も多かったし、今もそうなのではないかと思います。
河村さんは、タイトルは最初から『パンケーキを毒見する』で、上映時期は7月と決めて監督を探していました。「パンケーキ」は菅首相の好物ですが、政権発足時は菅首相のイメージは「パンケーキ」と、元号発表をした「令和おじさん」だったと思うんです。
決して悪いイメージではなかった。ところがその内実はどうか。そういうことを映画で検証しようと河村プロデューサーは考えていたのではないでしょうか。この映画を総選挙の前にぶつけて、世に問いたいと。
――自由民主党の石破茂議員や村上誠一郎議員、立憲民主党の江田憲司議員、日本共産党の小池晃議員といった現役議員の他、元官僚や新聞記者などが登場しています。インタビュイーはどのようにして決めたのでしょうか。
内山:本当はもっと菅さんの秘書や弟子筋に当たる人、また菅首相に近い当選回数が4回以下の政治家が所属する「ガネーシャの会」の議員に取材しようと思っていました。ところが、取材を申し込んでもことごとく断られました。
ドキュメンタリーを撮るからには「うちのオヤジはこんなに素晴らしい人なんだ」というコメントもできれば紹介したいと思っていました。それで「いい話」という意味での菅さん像は出せなくなってしまいました。
――「いい人」として扱うのであれば取材に答えてくれてもよさそうなものですが。
内山:企画書にはもちろん、批判だけではなく、公正な形で多面的に菅首相を取り上げるとは書いていますし、実際に出来上がったドキュメンタリーも一方的に「悪口」を言うようなものにはなっていません。
ところが、このタイミングで菅首相を扱うとなったら何らかの形で揶揄する内容になるというのを先方は予想できるわけです。後から「あの映画に関わったのか」と言われたくなかったのかもしれません。
また、マスコミ関係者に取材を申し込んだのですが、新聞社によっては事前取材では答えてくれた人もいました。ところが、撮影のためにアポを取った段階で、上層部から「自社の新聞記者はドキュメンタリーに出た前例がない」「記者は記事で表現しているのでそれ以上のことはしなくていい」と言われたのでキャンセルしたいと言った記者もいたんですね。
そこで、「菅首相と直接話したことのある人、関わったことのある人」という視点でインタビュイーを選び直して、取材をしました。評論めいたことを展開するのではなく、実際に菅さんと接した人との間に起きた事実を並べることによって、「菅首相像」を浮かび上がらせようと。
就任当初のイメージは「令和おじさん」
口を閉ざす関係者たち
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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