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若者が知らないスポーツ新聞の「味わい深い世界」。各紙ごとの特色を再点検

特色豊かなスポーツ各紙

 時計の針は進み、時代は平成から令和へ。多くの書物がそうであるように、スポーツ新聞の生き残りをかけた戦いもまた、歴戦の最中にあります。デジタルで情報を得ることが当たり前の時代にあっても、いぶし銀のごとく、コンビニで駅中のキオスクで輝きを放ち、働く多くの人たちの毎日に彩りを添えています。  例えば、まずは『東スポ』。「日付以外は全て誤報」と評されるほど娯楽性を重視していた同紙は、夕刊紙という強みを活かし、スポーツ新聞の中で最も早く国外スポーツの試合結果を伝えるメディアに変貌。メジャーリーグやゴルフのPNGツアー、欧州各国のサッカーリーグの動向に力を入れている印象です。娯楽性の強いゴシップ記事は減少傾向にある気がしますが、それでもいまなお、我らが『東スポ』は健在です。  日刊スポーツ、略して『ニッカン』はどうでしょう。調べてみると日本最古のスポーツ日刊新聞のこちらは、本紙とは別媒体となる特別版の発行にも積極的。駅売りよりも宅配が多く、購買層はサラリーマンから主婦層まで幅広い印象で、成人男性向けページ(アダルト面)の掲載はなし。過去には「ONE PIECE」や「スター・ウォーズ」、「AKB48 Group新聞」(現在は電子版)といった人気コンテンツも展開し、幅広い層から人気を集めています。朝日新聞グループの新聞なので、どちらかというと左寄り、体制に対して皮肉めいた記事が散見できますが、紙面全体を通して読みやすい印象です。  スポーツニッポン、略して『スポニチ』は毎日新聞系。独自の取材網で他社に先がけたスクープに強みがあり、SMAPや嵐の動向など、芸能系のスクープが多く、結婚や離婚で多くの話題を提供している印象です。経験豊かな専門記者が多く、スポーツアスリートの喜怒哀楽のストーリーテリングも読み応えありです。野球は阪神タイガース、競馬にも力を入れている印象です。

報知、サンスポ、東京中日…

『スポーツ報知』といえば読売ジャイアンツ。読売新聞系の強みをフル動員し、巨人が勝った翌日には1面から3面が巨人関連のニュースになり、選手のコメントもきめ細かく掲載。2軍選手の一言やOBの小言にも注目。巨人の機関紙、アンチ巨人のカルト経典、このイメージは昔も今も変わりません。  サンスポの愛称で親しまれる『サンケイスポーツ』の強みは、なんといっても競馬予想。サンスポ系列の競馬予想専門紙『競馬エイト』や競馬雑誌『Gallop』も人気です。ラグビーに力を入れていて、ラグビー関連の記事が毎日のように掲載され、プロ野球では関東版はヤクルトスワローズ、関西版では阪神タイガースの記事が積極的に掲載されている印象です。 『東京中日スポーツ』といえば、中日ドラゴンズとモータースポーツ関連の記事が充実。JリーグのFC 東京にフォーカスした記事も人気で、スポーツ紙で唯一、大学スポーツをメインに取り上げる「首都圏スポーツ」は学生スポーツ関係者から支持を集めているようです。  ここに述べてきたとおり、スポーツ新聞には各社「カラー」があり、スポーツやゴシップ、芸能、レジャーなど、娯楽関連のニュースを中心に専門の記者が健筆をふるっている最中にあります。近年の潮流でいえば、政治面や経済面など、比較的硬めの記事にも力を入れている印象です。あの頃とナニが変わったの? こう問われると、プロ野球のキャンプインの2月1日付けの紙面では相変わらず、そのニュースに注力しているのも確かです。でも、だからこそ「永遠のマンネリこそ尊い」とも思う次第です。想像してください。スポーツ新聞のない世界線を。聞けばいま、新聞購買層のメインは50代以上とのこと。低迷するスポーツ新聞の救世主はアナタだ、ということを力強く宣言して、筆を置きたいと思います。 <文/ディスコ☆セリフ>
数々の雑誌を渡り歩き、幅広く文筆業に携わるライター・紺谷宏之(discot)と、企業の広告を中心にクリエイティブディレクターとして活動する森川俊(SERIFF)による不惑のライティングユニット。 森川俊 クリエイティブディレクター/プロデューサー、クリエイティブオフィス・SERIFFの共同CEO/ファウンダー。ブランディング、戦略、広告からPRまで、コミュニケーションにまつわるあれこれを生業とする。日々の活動は、seriff.co.jpや、@SERIFF_officialにて。 紺谷宏之 編集者/ライター/多摩ボーイ、クリエイティブファーム・株式会社discot 代表。商業誌を中心に編集・ライターとして活動する傍ら、近年は広告制作にも企画から携わる。今春、&Childrenに特化したクリエイティブラボ・C-labを創設。日々の活動はFacebookにて。
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