エンタメ

地方局女子アナ「フリー転身」の夢と現実。転職失敗、アルバイト生活も

“目的地”までの道が見えなかった

思い出を振り返る

バス停で待つ人々を見て「女子アナにも目的地に必ず到着できる駅が必要と考えた」と話す樋田氏

 じつは、自身も地方局のアナウンサー時代を経て、30歳を前にそんな現状に悩んだ。 「頑張ってオーディションに合格して番組のレギュラーを獲得しても、その番組がいつ終わるかわからない。だから、最終的には自分で仕事や居場所をつくらなければいけないと思ったんです。ですが周りは『事務所に所属したり家庭に入ったりするしか道はない』と思い込んでいるアナウンサーが多い。そこで、志のあるアナウンサーたちの受け皿になろうと思いました」  そして、自分で会社を立ち上げることを決意した樋田さん。まずは、たくさんのアナウンサーの声を聞いてまわった。 「1分1秒を争ったあの現場に戻りたい」 「声を通して、人に喜びを届けたい」  そんな想いを捨てきれず、事務所に所属しながらナレーションの勉強を続けるアナウンサーが多いことに気づいた。 「アナウンサーは真面目で勉強熱心な人が多いのですが、目指すべき目的地とは全然違う方向に行ってしまう人もいます。それでは仕事につながらない。そこで、電車やバスの駅のように『ここから乗れば目的地にたどり着ける』という場所が必要なのではないかと」  樋田氏は、仕事に直結する仕組み、プラットホームをつくることを考えた。 「また、同じ地方局出身のアナウンサーでも積み上げてきた経験値は異なるため、能力を数値化することが難しかったんです。それならば、目安となるような“検定”を行えばいい。経験値を統一できるような“研修”の制度があればと思ったんです」

女子アナの新たな可能性を求めて

樋田かおり 多くのアナウンサーが、「仕事は出演者として話すこと」という固定観念にとらわれていた。だが、その能力をいかせる仕事がほかにもあるのではないかと考えた。 「地方局では、アナウンサーが自ら企画を考えたり、ニュース原稿を書いたり、映像の編集をすることまであって。ディレクターのように一連の流れを把握しています。根性も鍛えられますね。とはいえ、“フリーアナウンサー”の仕事は番組MCやインタビューなど、狭い範囲に限られています。もっと広い視野で見れば、活躍できる場所があるはずなんです」  そこで発案したのが「女子アナ広報室」。アナウンサーとして、一般企業の広報・営業・人事などを手伝うことだった。 「アナウンサーはコミュニケーション能力に長けていて、相手の良さを引き出すことが得意です。会社がより魅力的に伝わるように、長所を客観的に発見し、わかりやすく編集・加工することができます」  メディアで表に出ることだけではなく、一般企業まで目を向ければ仕事はたくさんある。そう考えれば可能性は広がり、セカンドキャリアとしても確立できるというわけだ。
次のページ
“オーディションを勝ち抜いた達成意欲”こそが自信につながる
1
2
3
4
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ