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選挙で自分の一票を有効に使わねば、何をされるかわからない/倉山満

たかがコロナ禍すら処理できない、政権担当能力の欠如

 民主制とは、殺し合いではなく、選挙によって物事を決める政治だ。三つめが必要かどうかは議論があるが、最低限二つの選択肢がないと、選挙の意味がない。なぜなら、選択肢が一つだと独裁と同じだからだ。そして表向き選挙をやりながら与党支持か棄権以外の選択肢がないと、選択肢はゼロと同じになる。なぜなら、何度選挙をやっても政権を失わないなら、与党は無限大に腐敗する。事実、この50年間、自民党はあらゆる無能をさらしてきた。しかし、少しばかり政権を失っても、すぐに有権者は許してくれる。その成れの果てが、たかがコロナ禍すら処理できない、政権担当能力の欠如だ。

「選挙制度を変えたから最近の政治は劣化した」という頓珍漢な指摘

 昔の自民党政治家、たとえば河野太郎氏の祖父の河野一郎氏が現代に生きていたらどうか。分科会など1日で皆殺しだろう。実際、行く先々の官庁で「農林省大虐殺」「建設省大惨殺」と恐れられ、大蔵省など「あの人だけはウチの大臣にしないでくれ」と歴代総理に常に泣きつくほどの実力者だった。一郎氏は総理になれなかったが、大衆人気はあった。  最近の政治は劣化したと言われ、「選挙制度を変えたからだ」などと頓珍漢な指摘がなされる。ならば十八世紀から小選挙区制のイギリスは、大英帝国絶頂期に政治が劣化したのか。関係ない。

問題の本質は、国民の政治への諦念

 問題の本質は、国民の政治への諦念だ。何をやっても政治は変わらないと国民が諦めているから、政治家、特に自民党政治家が小粒になり、官僚どころか政府のアドバイザー如きの言いなりになる小物があふれ返ってしまったのだ。田中角栄をはるかに超える金権政治家と言われた河野一郎を懐かしがらざるを得ないほど、昨今の政治家は情けない。  政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることではない。政治家が国民の声を聴かず、国益を守れないことだ。何より、そうした状態に国民が批判しなくなることだ。
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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