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皇籍復帰は「門地による差別」という誤解/倉山満

即物的なことを言えば、皇室は最強の外交カードである

 平成時代、「国民とともに歩む皇室」であり続けた。災害があるたびに天皇陛下は駆け付け、ひざを突き合わせて国民を励ました。言葉を選ばずに言うと、平成時代の天皇陛下は「親しみやすいお父さん」であった。こうした皇室の姿を国民は当たり前と考えていないか。
言論ストロングスタイル 皇室 「新年祝賀の儀」

「新年祝賀の儀」で衆参両院議長から挨拶を受けられる天皇陛下と皇后陛下。各党で議論が始まった「皇位継承に関する有識者会議」の報告書だが、意見が集約される日はいつなのか 写真/産経新聞社

 最近は、陛下や殿下を芸能人か何かと勘違いしていないか。開かれた皇室が、開かれすぎた皇室と化してきた。中には「もう、皇室なんかなくなってしまってもいいじゃないか」と言い出す人もいる。  即物的なことを言おう。皇室は最強の外交カードである。国際社会では、歴史が古い方が問答無用で格が上だ。我が国は公称2682年、どこをどう少なく見積もっても1500年は一度も歴史が途切れることなく続いている。皇室は一貫して日本に存在し続けてきた。

王室を滅ぼして幸せになった国はほとんど存在しない

 ちなみに世界第2位の王室は、デンマーク。日本で言えば、『古事記』の伝説をすべて史実と認めるような感覚で、公称1100年だ。日本の皇室は世界で圧倒的な伝統を誇る。  もし「もう、皇室なんかなくなってしまってもいいじゃないか」と言いたいなら、皇室をなくす積極的な意味を証明すべきだ。  世界の歴史において、王室を滅ぼして幸せになった国はほとんど存在しない。かろうじてオスマン帝国をクーデターで転覆したトルコくらいか。ただし、トルコ共和国建国の祖のケマル・パシャは、明治維新を模範とし、執務室に明治天皇の肖像画を飾っていたとか。例外中の例外だ。

皇室を残したい理由とは、そこに価値を認めるからである

 逆に、フランス革命にしてもロシア革命にしても、血で血を洗う混乱で、国民は地獄に叩き落とされた。カンボジアは国王自ら王制を廃止したが、ポル・ポトによる大虐殺を招き、国民の25%が殺された、反省の末に、今は王政復古している。  王様がいる、それだけで国が安定するのだ。我が国でも政治の勝者を認定するのは天皇だった。源平合戦でも戦国時代でも、勝者は天皇に承認を求めた。日本の歴史は、どんなに戦乱で世の中が混乱しても、最後は天皇が認めることによって争いは終わる。アンパイアがいるから、殺し合い(ゲーム)が終わるのだ。ヨーロッパのように、国王も皇帝も教皇も全員がプレーヤーだと、行きつくところまで行きつかないと戦いは終わらない。  だが、「外交カードである」とか「政治が安定する」とかの理由があるから、皇室を残すべきなのか。確かに、それらは重大な理由であるが、絶対ではない。逆を言えば、それらだけが理由ならば、外交カードとして機能しないなら、皇室の存在がなくても政治が安定するなら、廃止しても良いのか?  結局、皇室を残したい理由とは、そこに価値を認めるからである。
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伝統を受け継ぐ存在を残すことに価値を認めているのだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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