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皇籍復帰は「門地による差別」という誤解/倉山満

伝統を受け継ぐ存在を残すことに価値を認めているのだ

 日本の歴史において、天皇を脅かす権力者は何人も現れた。蘇我、藤原、平、源、北条、足利、細川、三好、織田、豊臣、徳川。しかし、彼らの誰一人として、皇室を廃止しなかった。彼らは政治の最高権力を握ったが、「天皇から認められた存在」で甘んじた。理由は何か。一つには、皇室は自らの権力を手放し、権威として君臨する道を選び、政治から超越していたから。  一つには、皇室を残す方が自分の権力を安定させるのに都合がよかったから。  一つには、「天皇は日本国を創った神様の子孫だ」と認めていたから。要するに、伝統を受け継ぐ存在を残すことに価値を認めたからだ。

都合がよいから、立憲君主制と議院内閣制が模範とされる

 ちなみに、この原理は現代でも生きている。近代政治の模範は、イギリスの議院内閣制である。立憲君主の下に、最高権力者である総理大臣がいる体制である。北欧やベネルクスの国々、つまり普通の国は立憲君主制の下で議院内閣制である。中国やロシアのような独裁国は論外として、アメリカやフランスのような大統領制は特殊である。王様がいない国でも、ドイツやイタリアはわざわざ「象徴大統領」の下で、議院内閣制を敷いている。  日本にはそもそも立憲君主である天皇が存在するので、議院内閣制を受容するのは難しくなかった。  大統領制の国では、行政権の長が国家元首を兼ねる。アメリカ大統領ですら、仕事の半分が儀式だ。それに対して議院内閣制の国では、儀式を行う最高権威である立憲君主と行政府の長である総理大臣は分離している。何かと都合がよいから、立憲君主制と議院内閣制が模範とされ、わざわざ「象徴大統領制」を導入する国まで出てくるのだ。
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旧宮家の皇籍復帰を「門地による差別だ」と反対する向きがあるが、ならば、女性はどうなる?
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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