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岸田内閣の「新しい資本主義」は「古くさい社会主義」にしか思えない/倉山満

政治が経済にできることは、民間の邪魔をしないこと

 岸田派の源流は池田派にある。池田は、長く苦しい反主流派を耐え抜いて派閥を培養、「日本をもう一度、大国に戻す! それにはまず経済だ!」との自らの明確な意思で総理大臣に就いた。  池田は「まず経済だ!」と宣言、民の活力を取り戻すことにすべてをかけた。政治が経済に対してできることは、ただ一つ。民間の邪魔をしないことだ。  個人や私企業ではどうにもできない障害さえ取り除けば、政府は余計なことをしなくてよい。池田内閣は金融緩和の仕組みを作り、大規模な財政出動でインフラ整備を行った。これらは政府にしかなしえない。一方で、減税と規制緩和で民間の邪魔をせず、民の活力を強める方針を貫いた。

「古くさい社会主義」にしか思えない「新しい資本主義」

 一方、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」は、何を言いたいのかわからない中で耳をすませば、聞けば聞くほど「古くさいカビの生えた社会主義」にしか思えなくなる。油断すれば「衣の下から増税」の姿勢だし、既にコロナ禍で政府による強烈な規制が進んでいる。政治的にも経済的にも徹底した自由主義だった池田勇人の真逆だ。  それでも岸田首相は、夏の参議院選挙に勝つまでは、おとなしくしておこうとの考えのようだ。参議院選挙を乗り切り衆参両院で過半数を得ていれば、3年間国政選挙を行わなくて済む。「黄金の3年間」が訪れると考えているようだ。  つまり、コロナで吐き出した財政出動をあらゆる名目の増税で取り返す。規制強化による官僚統制を強める。国民はただただ政府に従えばよい。そういう政治が「黄金の3年間」だ。

岸田内閣の大勝を望まない創価学会

 こうした状況を望まない勢力がある。連立与党を組む公明党とその支援組織である創価学会だ。  参議院の過半数は123。参議院は2年ごとに半数改選だ。  現在、参議院での自民党の議席は110。その内非改選が53。今回の選挙では57人が改選される。  公明党は、28人。14人が非改選、改選も14人だ。この党は勝率100%の選挙を続けている。おそらく今回も数議席の誤差しかないはずだから、選挙後も28議席と計算できる。これが公明党の強みだ。  公明党の28に自民党の非改選53を足せば81。自民党は今回の選挙で42議席を獲得すれば公明党と合わせて政権を維持できる。つまり自民党は、15人までは議席を減らして構わない。もっとも、本当に15人減らせば過半数ギリギリなので心もとないだろうから、日本維新の会や国民民主党に連立入りを持ち掛けるかもしれない。
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岸田内閣の生殺与奪の権を握っているのは誰か
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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