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岸田内閣の「新しい資本主義」は「古くさい社会主義」にしか思えない/倉山満

戦後政治に名を遺した首相は、退陣後に自らの派閥を失う

言論ストロングスタイル

第100代総理大臣として就任した11日後の’21年10月15日、「新しい資本主義実現本部事務局」の看板を持つ岸田文雄首相(中央)。しかし、いまだに“新しさ”は見えてこない―― 写真/産経新聞社

 戦後政治に名を遺した首相は、退陣後に自らの派閥を失った。なぜか。  政治家の派閥とは、領袖を総理大臣にするために集まった集団だ。そして領袖は総理大臣になり、歴史に残る政策を実行しようとする。時に、国内の抵抗勢力をねじ伏せ、外国の圧力を突破する。  吉田茂のサンフランシスコ条約、鳩山一郎の日ソ交渉、岸信介の日米安保条約、佐藤栄作の沖縄小笠原返還。それを成し遂げるには、膨大なエネルギーがいる。  だから、政策を成し遂げ、政権を失った時には、派閥を維持するエネルギーが残らない。首相退陣後も派閥が潰れなかった唯一の例外が、高度経済成長の道筋をつけながら志半ばで倒れた、池田勇人の派閥だ。

「サラリーマン政党」と化した自民党

 三角大福と呼ばれた第二世代、三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫の時代になると、総理大臣が何かを成し遂げる前に引きずりおろされ、「歌手一年、総理二年の使い捨て」と呼ばれた。  引きずりおろされた元首相達の派閥抗争は、怨念戦争と化した。さらに竹下登、安倍晋太郎、宮澤喜一らの第三世代になると政権与党の自民党は、悪い意味での「サラリーマン政党」と化した。  毎日、毎日、嫌な人間関係に耐えながら朝から晩まで働く。下げたくない頭を下げ、何の為にやっているのかわからない上から言われた仕事をこなす。「年月が経てば、いつか自分たちの時代がくるのだから、今は我慢しよう」と管を巻きながら。

岸田文雄首相は「サラリーマン政治家」の典型

 そうしたサラリーマンの溜飲を下げていたのが、昔の自民党政治家だった。親分が気に入らなければ、金を集めて仲間とともに派閥を割って出て、自分の派閥を作る。そして子分を育て派閥を拡大、総理の座を奪い取る。  あるいは、クーデターで親分の寝首を掻く。「ムカつく上司など、クビにしてしまう」自民党政治家の姿は、サラリーマンには絶対にできない。ところが、今の自民党政治家の大半は、「サラリーマン政治家」だ。本物のサラリーマンが最も嫌う。自分たちの嫌な部分を鏡で見せつけられているようだ。  その典型が、岸田文雄首相だ。生まれついての三世議員。親戚一同官僚一家。閨閥(けいばつ)に押し上げられて派閥の領袖、絶望的な人材難の中で自民党総裁、消去法で総理大臣に就任した。悪い意味での「サラリーマン政治家」だ。  この方、出世して総理大臣になりたいのはよくわかったが、総理大臣になって何をしたいのか、さっぱりわからなかった。それもそのはず、首相に就任してから有識者を集めて「新しい資本主義」とは何かを検討させている。
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「古くさい社会主義」にしか思えない「新しい資本主義」
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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