仕事

ラブドールの売上がコロナ禍で急増。オリエント工業が語る、人と会えなくなる中で“求められたもの”

伸び続ける女性ユーザー層の“ニーズ”とは

オリエント工業

「男装の麗人」をテーマに制作された作品

1977年の創業時、社内には「相談室」があった。当時は連絡手段といえば、手紙の他には固定電話しかない。そういう時代、誰にも言えない悩みを抱える人のニーズを汲み、設けられたものだ。 その後通信手段が発展し、かつショールームは完全予約制だったこともあって「相談室」は姿を消したが、今年6月のリニューアルで、その看板を復活させた。創業時の想いを大切にしようという理由だ。 時代は移り変わり、5年前の40周年記念展では、来場者の6割が女性。今も女性からのニーズは増え続けている。いわゆる性処理目的とは異なる需要において、目立つのはデッサンモデルとして欲しいというクリエイターや、お気に入りの服を着せて撮影したいというコスプレイヤー。このあたりは、漫画やアニメの普及もありそうだ。 その他、〈愛でたい〉〈飾りたい〉など、愛情を注ぎたいという声は多く、SNSには〈黙って話を聞いてくれるラブドールがほしい〉など、自分のよき理解者としてそばに置きたいといった願望も多数見受けられる。実際、そういった声を受け、5年前からは性的機能を搭載しない観賞用モデルも登場している。
オリエント工業

小柄なサイズの「Berryシリーズ」

着せ替え人形やぬいぐるみとの違いは?

着せ替えや、そばに置く目的であれば、小さな人形やぬいぐるみでもいいわけだが、〈ほぼ等身大のリアルドール〉を思慕する心理について、小澤氏は、「僕たちが行っている大学との共同研究では、実際に一緒に寝たら安心するという結果も出ました。人間らしいことで、 “人肌”や“ぬくもり”といった雰囲気をより感じられるのかもしれません」と話す。 メイクや造形は、最新の人気アイドルや女優を参考にしており、美しさの研究には余念がない。さらに骨格にも力を入れており、例えば指骨格機能として、指の関節に“骨”を感じられるものがオプションで入れられる。 物を持たせられるという狙いがあったものだが、ある女性ユーザーから「手を繋げるのがいい」と言われた小澤氏は驚いた。「癒される効果があるって。そんな接し方があるのかって、僕らが教えられました」(小澤氏)
オリエント工業

指骨格オプションを追加することで、指先までポージング可能に

透き通るような肌と、優しい表情がもつ無垢な包容力に加え、もはやアート的要素をも超えて惹かれる魅力があることがうかがえる。
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正面を見つめていない?独特な「目線」の秘密
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大阪府出身。大学卒業後、会社員を経てライターに。エンタメ系での著名人インタビューをメインに、企業/人物の取材記事も執筆。トレンドや話題の“裏側”が気になる。『withnews』で“ネットのよこみち”執筆中。Twitter:@Yoshikawa_Miho_

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