ラブドールの顔やメイクはどのように創られるのか――女性ファンも急増、もはやアートの領域に
“ダッチワイフ”といえど、幼い雰囲気から大人びた顔立ち、どこかアニメのキャラクターを彷彿させるものまで様々だ。そのなかには、指の指紋など細かなディテールに至るまで、人間の体を忠実に再現した高級品が存在する。まさに、“人として”のリアリティーを追求したモノを“リアルラブドール”と呼ぶ。そして、近年は男性ユーザーだけでなく、女性のリアルドールファンまで増えているらしい。
そんなリアルドールの印象を決定付けているのは、やはり人間と同様に“顔”。頭部ではないだろうか。では、リアルラブドールの顔や頭部はどのような過程を経て、製作から完成に至るのだろうか。そこで今回は、今年で創業40周年を迎えたドール製作の第一人者と呼べるオリエント工業にリアルラブドールのメイクアップや造形のこだわりを聞いてみた。
オリエント工業のリアルラブドールは本物の女性と見間違えるほどその完成度が高い。ドールメイク担当者がこう話す。
「ドールの全身はシリコンを使用して創られています。型取りされたばかりの頭部には当然、着彩がされていません。そこからメイクを施していくのですが、人間とドールのメイクアップではかなり異なります。例えば、人間のメイクであれば、目の下のクマや小鼻のくすみはファンデーションやコンシーラーで隠しますよね。一方で、ドールのメイクアップはその逆で、あえてクマやくすみなどを表現し、できる限り人間の地肌に近づけます」
「ドールと人間の決定的な違いは動かない点です。人間の顔の場合、喜怒哀楽によって表情が変化し、独特な印象を生み出すことができます。ですが、ドールは動かないので、表情は一定。だから動かないドールはその表情だけで印象が決まってしまい、人間と同じようにメイクをしてしまうと違和感が出てしまいます」
たしかに、人間とドールの違いは動作があるか否かといった点である。そのクオリティーを生み出す要因のひとつが、今まさに担当者が語ったように、あえてシリコンに地肌テイストのメイクを施し、さらにそこから普通のメイクアップを行っていることだ。また、担当者は自身のメイクアップに対するこだわりについてこのように語る。
「細かなディティールを再現するために、普段から人の顔をよく観察するようにしています。人気のモデルさんや女優さんのようにきれいな女性を見ることは、もちろんメイクの参考になりますが、『どんなところに影ができるか』など、街中で動く女性の表情を見ることでアイデアを得ることもしばしばです。また、リアルラブドールの基本的なコンセプトは『男性目線で、普遍的に心の中に留めて置く女性像』なので、メイクも外見的な見栄えだけでなく、人間の内側にある芯のようなものを表現するようにしています」
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1369769
リアルラブドールの頭部は、ひとつひとつ手作業でメイクアップされ、一つの頭部を仕上げるのに約4日間かかるのだという。こうして、ていねいにメイクアップされた頭部がボディと結合され、初めてドールとして形を成し、完成に至るのだ。
では、そもそもメイクアップされる前、頭部の造形・デザインとしては、どのような経緯があるのか。広報担当者がこう言う。
「顔のデザインはまず造形師がアイデアを提案します。そして、さまざまな議論を経て、時代のトレンドに合った試作品を製作、お客様に喜んでいただけるクオリティーの高いモノが完成したとき、初めて製品として店頭に並びます」
リアルラブドールの頭部には、その時代に流行ったメイク術や顔立ちが取り入れられている。生きている女性に限りなく近づけることに尽力するオリエント工業だが、歴代ラブドールのなかには、アニメチックな顔立ちのドールも存在した。
「2000年に登場したファンタスティックというドールがあります。この頃は“アキバ系”という言葉が生まれ、アニメ文化が拡大した時期でした。当社にはアニメやキャラクターの顔に大変詳しいスタッフが在籍しています。その知識をリアルラブドールに取り入れ、アニメファンの方にも当社の製品をぜひ愛用していただきたいと考えました」
このように、オリエント工業は常に時代のトレンドをドールに取り入れてきた。40年の歴史で多くのファンを獲得してきたことは言うまでもない。だが、ファンのなかには女性も多い。そのため、上野ショールームには、女性客も頻繁に来場するのだという。本来、リアルラブドールとは、男性が擬似恋愛を楽しむための性具と思われるかもしれないが、なぜ女性にも愛されるのか。彼女たちは、どこに魅力を感じているのだろうか。
人間とドールのメイクアップは真逆
造形師による頭部のデザインには時代が反映
1
2
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ