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ラブドールの売上がコロナ禍で急増。オリエント工業が語る、人と会えなくなる中で“求められたもの”

正面を見つめていない?独特な「目線」の秘密

オリエント工業同社のラブドールを前にした時、気がつくのは目線が独特だということだ。何かを慈しむような瞳は、一体何を思い、どこを見つめているのか。大澤氏が解説する。 「まず、視線移動あり、なしというオプションが選べます。視線移動ありですと、好みの位置で視線を設定できますし、写真を撮影する方からは、視線が動くことで表情が変わるので、作品の幅が広がるという話も聞きます。 視線移動なしは、物理的に接着剤で固定するんですね。その際固定するポイントは、実は体を重ねた時にちょうど目が合う位置なんです。だから、遠くから見ると、少し目が寄っている。反対に、例えば5m先にいるドールと自分の目が合うように設定するとしますよね。次にそのドールに顔を近づけると、ドールが遠くを見ているので、なんだか上の空で、コミュニケーションを取ることができない印象になってしまうんです」 どこまでも、「寄り添う」ことに意識が向けられているのだ。 「最初は、ドールの金額を風俗に行く回数で割って、何回使えば元が取れるって計算していたような人も、時間とともに、それだけの触れ合いじゃなくなってくるものです。人間だって恋愛から始まっても、徐々に人としての結びつきを重視するようになる。同じなんです」(大澤氏)

“生”をともにする「家族」

オリエント工業オリエント工業でドールを注文すると、箱に裸で寝た状態ではなく、きちんと髪がセットされ、座っている姿に、指輪が添えられて届く。棺桶のように見えてしまうのは寂しいという想いと、「モノ」として扱わない、という矜持がそこにはある。 不要になったドールを引き取る“里帰り制度”も同じ想いからだ。 「処分するには切り刻むしかないけど、それは大変だし、自分が一度でも愛した相手を手にかけるのは嫌なものでしょう? あと、昔不法投棄されて、事件みたいに扱われちゃったことがあったので(笑)。うちで責任をもって人形供養をして、処分させてもらうようになりました」(大澤氏) オリエント工業“里帰り”のため引き取りに行くなかで、小澤氏には、忘れられないエピソードがある。 「弟さんからの連絡で、亡くなったお兄さんの家にドールを取りに行ったことがあるんです。家に着いたら、一体って聞いたのに、何十体もあって……。一度で終わらせてほしいという依頼だったので、小さいバンにパンパンに詰め込んで。後部座席から、前のほうに腕や足があっちこっちはみ出した状態で帰ってきました(笑)。大変だったけど、それを任されることに、有り難さと嬉しさは感じましたね。この子たちはいい人生だったなって」(小澤氏)
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ドールの「声」に対する想い
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大阪府出身。大学卒業後、会社員を経てライターに。エンタメ系での著名人インタビューをメインに、企業/人物の取材記事も執筆。トレンドや話題の“裏側”が気になる。『withnews』で“ネットのよこみち”執筆中。Twitter:@Yoshikawa_Miho_

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